オーガニックパン発表会〜小麦の収穫からパンになるまで〜
山崎豊氏が「有機小麦の可能性と自然に寄り添ったパン作り」を講演

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焼成の様子

カンパーニュ

 オーガニック小麦普及プロジェクトは11月30日、アグリシステムM、M斉藤農場、M満寿屋商店協力の下、北海道帯広市のとかちプラザで「オーガニックパン発表会〜小麦の収穫からパンになるまで〜」を開催。約60名が参加した。

 同発表会は、M満寿屋商店代表取締役の杉山雅則氏が司会進行を務め、アグリシステムM専務取締役の伊藤英拓氏が開会の挨拶をした後、オーガニックパンプロジェクトの目的と概要を発表した。続いて、山崎豊氏がオーガニックの現状・オーガニックの市場性・オーガニック小麦や伝統製法によるパンづくりの重要性などを、ヨーロッパ(主にフランス)で自らが経験した体験談を中心に披露。今回のプロジェクトの経緯や体験を通じて、十勝の生産者に向けて十勝のオーガニック小麦生産の可能性と求められる国産オーガニック小麦について講演した。
 講演後に山崎氏が焼いたカンパーニュを試食。「香り高く小麦の旨みが力強くも繊細に広がる。力強い風味を感じさせながらえぐみがなく透明感がある。体にすっと入ってくるような優しさを感じるパン」など、オーガニックパンに関する意見交換も行われ、山_氏に対して多くの意見や質問が寄せられた。
 その後、10年に亘って有機栽培を実践している有機小麦生産者であるM斉藤農場の斉藤正志氏がオーガニック小麦の生産の難しさや農業経営としてのメリットなどオーガニック小麦の生産間口が広がる農業講座「有機小麦の生産について」を講演。有機農産物の生産やパン作りに関心のある生産者、ベーカリー、消費者にとって貴重な機会になった。また、生産者・ベーカリー・消費者別に内容の異なるアンケートを実施。オーガニック小麦に強い関心と前向きな意見が多数見られた。参加したパン職人たちは、オーガニックパン需要や機械に頼らないパンづくりに大きな関心を寄せた。

《オーガニック小麦普及プロジェクト》
 全国的にオーガニック(有機栽培)小麦の需要が大きく増加している中、有機農産物の生産者戸数、生産量は圧倒的に不足している。同プロジェクトの目的は有機小麦の生産拡大。生産の難しい有機小麦を普及するためには生産者とベーカリーと消費者の深い相互理解とつながりが不可欠となる。
《山崎豊氏プロフィール》
 1961年北九州生まれ。辻調理師学校製菓・製パン教授、フランス・ドイツでの研修を経て、ブルディガラシェフ、ジェラールミュロ福岡シェフなどを歴任。2012ドイツibaCup総監督を努めた。
《これまでの活動内容》
◇7月21〜22日
 山崎氏が斉藤農場でオーガニックゆめちからを鎌で手刈り収穫。また、選別機は使用せず、手作業で選別しているので、莢雑物を1日かけて手選り(てより)し天日乾燥を行った。
◇11月上旬
 伊勢神宮の改修で副棟梁としても活躍した十勝出身の宮大工「おかげさま(社名)」の菅原雅重氏に無垢の木(桂)を使用した種起こしの桶と生地を手ごねするための桶を特注で製作(鉄釘や合板などを使わず木杭だけで仕上げた逸品)。こちらを使用して種づくりを開始した。
◇11月中旬
 山崎氏が手刈りしたオーガニックゆめちからを小さな石臼で2日間かけて自家製粉。生地だけでなく、種にもこの小麦が使用されている。
◇11月25日
 山崎氏が再度十勝来訪。オーガニックゆめちからで種起こし、種継ぎ・試作を現地で行った。
◇11月29日
 パンづくり本番の日。風土火水(帯広の薪窯ベーカリー)で、山崎氏自らが刈ったオーガニックゆめちからで生地を作った。ミキサーを使わず伝統的な設計で作られた無垢の木桶を使用し手ごねで生地を作った。十分な発酵をとった後、十勝の楢(なら)の薪を使い薪窯でカンパーニュ「ルヴァン・ナチュール」を焼成。
◇11月30日
 オーガニックパンプロジェクト発表会当日。参加者は、生産者・パン職人・製粉会社・一般消費者など。地元新聞社2社も取材に駆け付け、後日詳細の内容が報道された。

 以下は山崎氏講演要旨の一部。
 私がベーカリーキャンプで、杉山社長に麦畑の見えるところで原始的な方法を用いパンを焼きたいと話したことが今日の発表会に至った原点。今後は間違いなく有機小麦の時代が来ると確信されていたアグリシステムの伊藤専務を、フランスの有機製粉所や有機ベーカリーに連れて行った。その後活動を具体化された。数年経過したが、十勝で有機小麦を使いたくても思うように入手できず、農家も有機小麦に対する関心が薄かった。しかし、需要は沢山あるため、今年春に3人で話し合い、このプロジェクトを立ち上げた。
 収穫前に有機小麦を栽培している斉藤農場に出向き理解をしていただき、収穫は手刈りし、手で脱穀し、天日干しをして石臼で製粉した。極力人工の物を使わないということで、自家製酵母を起こし、手捏ねする桶は、伊勢神宮の副棟梁にお願いし北海道産の無垢の木で作っていただき、薪窯でカンパーニュを焼成した。当然ながら冷蔵庫は使用せず、酵母の発酵も常温で行なった。但し、発酵用の籠だけは北海道産の布が手に入らなかったため、フランス産を使用した。
 このプロジェクトは、有機小麦を育てていただける農家を増やしたいという目的で動いている。私は、農家に対し有機小麦の重要性を説明するためにパンを焼き、食べていただくことや有機の現状と今後についてベーカリー・カフェ・スーパー・マルシェ等に対しても主にフランスの有機に取り組む写真で説明する活動を行なっている。
 発表会の数日後「今回の講演で、農家1社が有機に転向するという。十勝の農家は作面積が大きいので1社でも相当な量が収穫できる。少しは役に立った」という報告が山崎氏より届いた。

《アンケート結果(ベーカリー)》
Q 今回の講演会に参加した理由
A オーガニックの小麦について勉強したかった。パンにオーガニック小麦を使用しているから。山崎氏の講演会に興味があった。など。
Q パン作りにオーガニック素材を使っていか
A はい:安全性、味
A いいえ(関心のあるオーガニック素材は):十勝産オーガニック小麦。ライ麦粉、酵母、ナッツ類、乳製品、野菜。など。
Q オーガニックの小麦粉は割高だが、付加価値を付けるためにどんな工夫があるか
A オーガニック小麦の性質などをアピールする。自家製酵母を使い小麦の味を強調させる。小麦を扱う際の技術。伝統的な製法と高級感、おすすめの食べ方、他のオーガニック食品を同時に販売する。など。
Q 客はオーガニック小麦粉を使った商品に興味があると思うか
A 理解している客が増えている。興味はあると思うのでどのようなものかを説明したい。ニーズは確実にあると思う。など。
Q 今回の講座で共感したことは
A オーガニックは益々広がると感じた。オーガニックパンの必要性を強く感じた。アトピー、アレルギーの人に優しい。など。
Q オーガニックに関する意見
A オーガニックの小麦のパンを今後多く作りたい。農業政策として国の補助制度を早く確立しないと世界から取り残されてしまう。十勝でオーガニックに生産者を増やしてほしい。

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斉藤氏

山崎氏講演の様子