木もれび第64話
M木輪 芳野栄氏

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寛容さを身につける

 経営者や人の上に立つ立場の人には、「寛容さ」が求められると思っています。「寛容」とは、他人のあやまちや欠点を責めたてるのではなく、それぞれの立場で考えることのできる広く、あたたかい心のありかたを言います。これまで「素直」「謙虚」「誠実」「忍耐」「機敏」「努力」といった「寛容」以外の徳目も経営者として欠かすことのできない徳目として大切にしてきましたが「寛容」こそが、社員を育て、社員を定着させ、潤いのあるあたたかい社風を作る上で欠かせない徳目だと思うようになりました。
 「寛容」は、ちょっとでもルールや指示したことから外れたら厳しく戒める「厳格」でもなく、ルールや指示したことから外れた違反者を見て見ぬふりでほったらかしにする「放任」でもない、その間のちょうどよい具合のところにあります。
 厳格な父親の影響を強く受けた私は、約束や決められたことから外れた社員を見ると、注意する、戒めるという姿勢で取り組んでまいりました。現在、その当時を振り返ってみると寛容さに欠けていたなあ、ギスギスした社風を作り出していたのは自分自身だったなあと反省しています。
 寛容さが経営者として大切な徳目であると気づいてからは、それまでの自分を改めようと試みました。社員の良いところに目を向けようと意識するようになり、自分の心の中に少しずつ変化が感じれるようになりました。その結果、社員の良いところが見え、さらに社員のことをよく知るようになると、少々の失敗やミスも以前ほど気にならなくなり、そのことが周囲の人に迷惑をかけずに済み、私さえ我慢すれば済むことであれば「まっいいか」と許せる気持ちになってきたのです。また、他の社員が同じような失敗やミスをしないで済むように事前に注意を促したり、朝礼などで根気よく伝えていくといった教育にも力を注ぐことが大切なことだと気づきました。
 寛容さを身につけていく上で大切なことは、心のクセ(自我の意識や業の意識が過剰に働くこと)を正していかなければならないことにも気づきました。例えば二人の社員がいて、Aさんに対しては、日頃から良いところがよく目についていたとします。一方Bさんに対しては、良いところよりそうでないところ(欠点)にばかり目がいっていたとします。そんな時AさんBさんが同じ失敗やミスをした時、Aさんには「まっいいか」とそのミスや失敗を許せても、Bさんに対しては「どうしてミスや失敗をしたのか」と責める気持ちが湧いてきます。自分の心のクセが二通りの行為を生んでいるのです。心のクセを正し、どの社員に対しても良いところにしっかり目を向け認めることで寛容さが身につくのではないかと思っています。また心のクセを正していくと社員に欠点やいたらないところがあったとしても気にならなくなるものです。
 親は、自分の子どもの良いところもそうでないところも全て愛しています。同じように経営者として、社員の良いところもそうでないところも思いやりの心で接していくことが、寛容さを身につけていく上で、大切だと学びました。

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