東濃学校給食炊飯センターパン工場〈岐阜県多治見市〉
製造の平準化を軸に様々な取り組みを展開
近隣圏と手を組んだ連合性給食システムを構築する

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嶋内八郎氏

工場外観

 東濃学校給食炊飯センターM(嶋内八郎社長)は、〈おいしく〉〈確実に〉〈安心して〉をテーマに、会社一丸となり学校給食に取り組み、積極的に新たなことに挑戦し続けている。

 同社は、現社長の祖父が1951年に嶋内産業を創業し、レストラン・ガソリンスタンド・米穀店などを営むほか、学校給食パンの製造を開始した。1976年に文部省令第5号をもって「学校給食法施行規則等の一部を改正する省令」が公布され、米飯を学校給食に明確に位置づけることとされたことに伴い、学校給食パン提供の実績により1978年、2代目の嶋内龍男氏(現代表取締役会長)がP嶋内産業を設立し、1980年より同社を含むパン製造業者3社が合同で炊飯工場を立ち上げた。組織は、協同組合とするのではなく、株式方式の東濃学校給食炊飯センターMとし学校給食米飯の製造を始めた。
 八郎氏は、元々家業を継承する気はなかったが結果的に継ぐことになった。
 「当時は『ローリエ』というリテイルベーカリーや卸のパンを製造していたが、私が事業継承する時点で全てを整理し学校給食に特化した。理由は、パン製造業者が、米飯給食の普及により炊飯工場へ移行、また、パン給食の減少に伴って学校給食事業からの撤退が続出して、弊社の仕事が忙しくなって、学校給食に軸足を置かなければいけなくなったこと。但し、施設や私立幼稚園・保育園は残すことに決めた」と八郎氏。
 東濃学校給食炊飯センターMを立ち上げたP嶋内産業以外の2社は、ともに後継者が不在で、八郎氏が継がなければ消滅してしまうため、銀行の融資を受けて2社の株式を買い入社することになった。
 「会社経営を始めると、嶋内産業と東濃学校給食炊飯センターを統合させる必要性を感じ、2002年に組織的に大きい東濃学校給食炊飯センターに嶋内産業を吸収合併する形で会計を統一した」
 同社は、様々な変革に対応するため〈おいしく〉〈確実に〉〈安心して〉をテーマに、会社一丸となり学校給食に取り組み、事務システムの一元管理、製造方法の改善など、現在進行形で積極的に新たなことに挑戦し続けている。
 嶋内社長は、大学卒業後、川崎重工業Mに入社、ロボット営業技術を担当して合計東京で10年間過ごしたという。2006年に、公益社団法人日本食品衛生協会が定める食品製造工程管理技術力高度化(HACCP)促進事業による「HACCP責任者養成研修」を修了した。
《工場の概要》
 2007年2月にパン新工場が完成。3月に本格的な製造を開始した。生産能力は日産15000食。会計をはじめ製造に関するデータ管理等は、全て自社でシステムを開発しており、クラウドにアップロードすることにより、何時でも何処でもタブレットで状況が把握できる。
◇工場勤務表(日毎30分単位で、作業工程別開始・終了時間/時間帯別必要人員/合計必要人員/個人別作業時間/作業工程・個人別残業時間/作業工程・個人別合計作業時間)
◇配送予定表(日毎で、個人別配送・回収先・数量/個人別出発・到着時間)
◇週割日程表(週間で、米飯・パンの曜日別納入先・食数)
 学校給食は、約2カ月前に発注されるため如何に平準化するかが最大のポイント。平準化することにより、日産の波を平らにし、穴を無くすこと。多少は止むを得ないが、極端であると製造ラインの整合性が取れなくなる。そこで、嶋内社長は次のように語った。
 週割日程表を予め作成し、発注予定が決定する前に市町村と折衝し、なるべく弊社の製造ラインが平準化できるように願い出ている。併せて、回収時間も願い出ている。互いの調整を経て、前月25日に製造食数を確定する。食数が確定したら、工場勤務表や配送予定表に落とし込む。パンは前日焼成だが、中種を用いオーバーナイト製法を主軸にしている。平常は、5時からスタートし14時くらいに終了し、後片付けをする。ミキサー等は13〜14時くらいに後片付けを始め、翌日の種仕込みを行うというシフト。市町村に対して働き掛けをしなければ、平準化は不可能。一般の企業が自社製品をPRし少しでも有利に販売するために営業活動をすることと何ら変わらない。学校給食提供業者は、少なくとも平準化を実現するための営業活動をしなければいけないと思う。平準化ができなければ目に見えないコストが掛かっていることを現実的に認識してほしい。営業に行けば、食数を増やしてくれることもある。
 「人・モノ・金」というが、最もウエイトが高いのは人。人に関するシフトをコントロールし予定製造と生産の効率化を実現するためには、現場レベルで日々の営業的活動が必要だということを改めて認識した。
《安全衛生の取り組み》
 2012年、パン工場で一般社団法人日本パン技術研究所による「フードセーフティ監査」を実施「優秀」を獲得。炊飯工場では、2017年に同研究所による同監査を実施、パン工場と同様に「優秀」を獲得。
 「岐阜県版HACCPがあるが、未だ取得していない。そろそろ取得しないといけないとは思っている。マニュアルはHACCPに対応できるレベルで現在も運用している。取得するにしても学校給食を提供している関係上、岐阜県版HACCPが望ましと考えている。仮に旧A基準を取得するとすれば炊飯工場。従業員は全員、安全衛生に対する意識レベルが高く、何事もルール通りに行うという強みがあると自負している」
【品質・安全・衛生管理指針(凡例:基本対策=現状→今後の対策と方針)】
▽各工程の安全・衛生管理=@作業工程を「米投入」「炊飯」「盛付」「洗浄」「配送」「付帯」の6工程に細分管理Aその工程毎に問題点・改善点・注意点を具体化し対策案を実施→@各工程を更に具体的対象物(人・機械・備品・建屋)に分類しより具体化A改善提案マトリックス表を作成し明確化を図る
▽従業員への教育及び意識向上=@業務規定、公共資料、HACCP資料等を使用し社員会議や掲示板利用による意識向上への訴えかけA朝礼を実施し常に注意を呼びかけている→@独自の安全・衛生マニュアルを詳細化。これを基準とした社員教育を実施
▽徹底した異物対策=@異物混入の記録リストによる状況及び原因の把握A外部専門企業の詳細分析による原因の徹底追及→@記録リストのデータベース化による全てにおける状況分析力のアップA分析に基づいた科学的意思決定による徹底した対策・改善の実施
▽製造データ蓄積による品質管理=@基準データ及びテストデータに基づく炊飯作業A試食による判定、確認→@調査データに基づくデータベース化による品質の安定化A試食判定基準書を作成し確認作業の明確化  嶋内社長は将来の展望を次のように語った。
 学校給食事業は、岐阜県内だけで考えているのではない。県内だけで事業を存続させることが難しくなってきており、愛知県や長野県と手を組んで動ける連合性給食システム構築したい。米飯・パン・麺の供給業者と一緒になって主食全般を掌握し、毎日提供される牛乳も加え、配送システムの一元化ができれば、違った展開が望める。学校給食に魅力を感じない人が多いようだが、決してそんなことはない。主食であるため栄養実施基準に沿って、菓子パンやクロワッサンを提供することはできないが、地産品に合わせた食べ方提案なども行えるようになっている。
 また、元々リテイルベーカリーを展開していた会社であり、約45年前には「焼き立てベーカリー」として脚光を浴びていたこともあって、何らかの形で再開したい。できれば、食パンとコッペパンの専門店をオープンし、子供世代に引き継げたら幸いと考えている。
 それから、全日本パン協同組合連合会の将来を考え、定期的な収入源が得られる仕組みを作り、全国的な交渉事が継続して円滑に行える道筋を整備したい。

【東濃学校給食炊飯センターM】
炊飯工場:〒509-5132岐阜県土岐市泉町大富1654-83
TEL0572-55-4628、FAX0572-55-6375
パン工場:〒507-0901岐阜県多治見市笠原町向島1523-1
TEL0572-43-3083、FAX0572-43-5878
▽事業内容=炊飯部門:学校給食用米飯、市販受注飯缶、パン部門:学校給食用パン、市販給食用パン、オーダーパン製造
▽設備機械=炊飯工場:炊飯前自動ライン・炊飯機械・飯缶盛付機・殺菌保管庫・各種洗浄機械・排水汚泥処理施設・自動開閉シャッター・エアーシャワー室、パン工場:ミキシング・分割丸め機・モルダー・醗酵室・焼成窯・エアーシャワー室・リバースシート・冷蔵冷凍庫
▽従業員数=27名
▽就労時間=炊飯・パン工場ともにコアタイム7〜16時

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工場内の様子

ミキサー清掃の様子

トイレの手洗い設備