木もれび第67話
M木輪 芳野栄氏
『心』というかくし味

BACK

 私は今さらながら、パンという商品にとても魅力を感じています。小麦粉に塩や砂糖、水、その他の副資材を加え、混ぜ合わせることで、それぞれの原材料の良さが引き出され、おいしいパンができあがります。さらに、『心』というかくし味を加えることにより、いっそうおいしく、感動を与えるものに仕上がっていくと思っています。パンを造ったり、販売する上でどんな『心』というかくし味があるかを考えてみました。
 まず「おいしいパンを造ってお客様に食べていただき、喜んでいただこう。お客様に安心と安全をお届けしよう。」と強く思う『心』だと思います。また、製造の基本をしっかり守り、その上で、「独自のパンを創作しよう」という『心』も大切です。他店の真似であっては、そこに『心』は注入できません。自分で創作したパンをまごころ込めて、一生懸命造ることです。するとできあがった商品に対して、とても愛着がわいてきます。
 次に、その商品をつくろうと思ったいきさつや思いの深さを正しく伝えようとする『心』です。それをプライスカードに正しく表現する必要があります。同時に試食をすすめる際に、直接お客様にお伝えすることも大切になってきます。そこがいい加減であったり、人まかせにしてしまうと、せっかくのおいしいパンもお客様に喜んでいただけるようには、育っていきません。またネーミングも大切です。それはかわいい我が子に思いを込めて命名することと同じです。思いを込めて商品名を考え、プライスカードに書くのです。ありきたりに商品名であったり一般的なものであったりしては、造る側の思いや『心』はお客様には届きません。木輪では、創業当初から商品には、「大樹」「きりかぶ」「幹」「あすなろ」…等々、私のつくる思いと将来の姿を願って思いを込めて、商品名をつけてまいりました。
 さらに、店頭に並んだ商品を大切に育てていこうとする『心』です。子供とて同じことです。愛情と手間をかけ、すくすくと育つように努力しなければなりません。パンも同様に、お客様に気に入っていただけるよう接客や販売方法に細心の注意を払い、パンの試食やおいしい食べ方の提案なども積極的におこなう必要があります。
 最後はご来店いただいたお客様への感謝の『心』が何よりも大切だと考えます。数あるパン屋の中から木輪を選んでいただいているのです。明るい笑顔での挨拶、感謝の気持ちの伝わる丁寧な接客は欠かせません。
 このように考えてみますと、パンを造ったり販売する上で『心』という隠し味の大切さは、はかり知れません。『心』を基軸にして、全てが動いているのです。木輪のスタッフ全員で『心』を磨き、『心』を高め、『心』というかくし味を大切にしながら、お客様に喜ばれる商品づくりと接客をめざしていきたいと思います。

新聞最新号へBACK