100年企業をめざすB
M木輪 芳野 栄

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 人間学を学び人間性が向上してくるとものごとの変化に敏感になります。つまり気づきの多い社長となれます。変化に対しても適正かつ機敏な対応が可能となります。さらなる人間性の向上が新社長(息子)に求められています。私の息子ということで思いや考えが一致したとしても、経営者としての能力が一致しているとは言えません。創業者を越える経営者としての能力を身につるべく人間性、専門性において一層の努力が求められるところです。
▽専門性の向上:会社を永続させるためには、社長として自らの技術、技能のレベルアップは欠かせません。会社独自の技術的ノウハウを確立し、他社との差別化をはかっていくことが大切です。オンリーワン企業となる礎です。さらに社長の技術、技能のレベルアップは社員の技術、技能のレベルアップには欠かせません。
▽新路線の模索:5年間「守」の部分を大切にしたあとは、「破」から「離」へ展開しなくてはなりません。
守るべきことと改革をすべきもの、また時代の要請に応じて新路線を模索していくことが求められます。このように木輪が100年企業となるには、創業者(私)とは異なった努力が求められます。C創業者(私)に求められるもの
▽創業者としての思いを引きずらない:創業者として、会社を立ち上げ、順調に推移してきたという自負があり、同時に木輪という会社がとても愛おしく思えてなりません。大切にしたい気持ちは誰にも負けないものがあります。
 人には誰でも自分を大事にし、自分を守ろうとする心を持っています。「自我」と呼ばれる心のクセです。「自分がつくった会社」「自分が育てた会社」という「自分が」にとらわれ、こだわってしまって手放せないのです。このように自分でつかんだ手をしっかり握りしめたまま手放さない限り、新たな企業の発展は望めません。自我執着から離れ一旦手放してみることが大切だと気づきました。同時に創業者として「経営者が息子に変われば、会社もそれに応じて変わるものだ」ということをしっかり認識しておくことが大切と気づきました。そのことがしっかりと私の心の中で認識できないうちは、心が乱され、おだやかな心を得ることができませんでした。
 同時に過去にとらわれないことが大切です。「以前はこうだった」という昔話はしない。「自分はこれだけやった」という自慢話もしない。「こうしないとダメだ」と自分のモノサシで説教しない。息子に質問されたら自身の体験を踏まえて答えるだけの相談役に徹すること、何があっても自分も通ってきた道だと思い寛容さで変化を見守るのです。要は息子を信じて息子に木輪を託す、委ねるスタンスが求められます。そうしたことのできるようまた心の葛藤のなくなるよう、私にも息子同様に人としての心の器を広げていくことが求められています。
D後継者が息子(身内)であるということ
 木輪の後継社長として創業社長を乗り越え、立派な社長になってやるという強い信念を持って欲しいと思います。創業の苦しさはもう味わう必要はありませんが、後継者として創業者である私の味わったことない新たな苦労があるはずです。新社長として何より大切にして欲しいのは社員の幸せです。まだまだ未熟な経営者として失敗を含め色々な壁にぶち当たり、さまざまなことを体験し体得する中で成長していって欲しいと願っています。そのためには、他の社員の誰よりも熱心に仕事をしていくことが求められます。とは言っても、私がしてきたような苦労をさせたくないという親心もあります。息子には苦労させたくない、失敗させたくない、さらには、幸福な人生を送って欲しいと思いが頭をもたげてきて、手出し、口出し、転ばぬ先の杖が私の言動の中に多いのも事実です。
《おわりに》
 事業継承は自分がやってみて本当に難しいものだと思いました。私が創業者だけに私のわがままや、自我が顔を出し後継者の足を引っ張ってはいけません。私自身を改めないと、と思う毎日です。こうした心の葛藤の中で社長を譲って2年経過しました。私も新社長も求めるところは「100年企業をめざす」ということで共有できています。そこをお互いにしっかり認識しながら「共に学び、共に成長する」という考えのもと、これからも努力を続けていきたいと思っています。

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