ヒシヤ食品〈神戸市垂水区〉
事業継続は環境変化と状況を把握し
適切に将来を予測すること

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草野社長

工場内の様子

ミキサーなど

 Mヒシヤ食品(草野洋一社長)は、戦後まもなく創業、1958年学校給食事業の開始とともに法人化した。神戸市垂水区内のもう1社と力を合わせて学校給食パンを製造した。現在は、パン・米飯併せて1日平均15000食を23校に納入している。

 草野社長は1965年生まれ。1989年同社に入社。同社は、学校給食事業を主体にコッペパン専門店「コッペプリュス」を展開している。昨年、ほとんどの卸事業から撤退し、工場設備の整理と新規導入を行い、機械と人の動線を改善し、若干の人員減を図った。
 「1年後の今年4月、売上には多少の影響が出るものの利益率が向上し成果が出始め、この調子で推移すると設備投資分の借り入れを返済しながら、内部留保ができると思っていた。その矢先にコロナウィルス感染拡大防止による緊急事態宣言の発令で学校給食が休止。現在も休止状態が続いており、新たな借り入れを検討しなければいけない状況にある」と草野氏。
 神戸市の学校給食は、週に3回が米飯、2回がパンの給食になっている。全パン連が掲げているパン給食の目標と同じ。兵庫県のパン給食は、大多数で当日焼きが指定されている。
 「当日焼きは、強みであり弱点でもある。強みは、当日焼きは全国的に珍しく、外部の新規参入社が現れても条件を満たせることが難しい。リスクは、急な設備機械の故障など。これに関して組合でカバーし合える危機管理体制を整えているが、思い通りに機能するかは実際に起こってみなければ分からない。コロナの影響で学校給食会から前日焼きで個包装ができないかという問い合わせもあるが、兵庫県内の学校給食業者は、当日焼きが条件になっていることから、ほぼ設備を有していない。弊社は、淡路島の学校に納入しているため包装機を備えている。神戸市もいずれ同様の要望を出してくると予測できる」
 経済産業省からの持続化給付金は受領したという。
 「3月分の給食提供業者に対する学校給食費返還事業等は申請手続きが完了しており未だ入金されていない(5月20日現在)が、県全体では比較的スムーズな流れで交付が完了すると思っている」
 兵庫県学校給食パン・米飯協同組合員全社が期限内に申請手続きを完了させることができるかを案じていたらしいが、刻々と変化する状況の把握や情報収集による対応もあり、概ね順調にことが運んだようだ。
 草野氏は、今後の展望を次のように述べた。
 「コロナの前後で展望は変化している。コロナ以前から色々と葛藤があった。自分の年齢と現場の一線で働ける時間を考えて合わせて、今の食数と体制を維持すれば、ヒシヤ食品の会社経営は問題がない。有難いことに神戸市からまとまった食数を受注できており、パン・米飯設備は全て更新することにより、何ごとも起こらなければ10〜15年間のパン・米飯製造には支障がない。しかし、兵庫県学校給食パン・米飯協同組合のことを考えると、郡部で学校給食業者が減少し続け、給食パンが提供できない事態に陥ろうとしている状況を、放置したままで良いのかという大局を鑑みた判断が交錯した。加えて、後継者を決めていないこと。後継者が決まっているならば、兵庫県全体のパン給食を視野に入れた設備投資に踏み切ることができた。
 コロナが襲来し、もう一踏ん張りしなければいけないと思っている。市内の同業者で3〜5年先に廃業を決めている会社は、コロナ収束後の新生活様式に合わせた設備投資をせず、早晩に廃業するという声も聞こえており、そうなればこのままの状態で良いものかと悩んでいる。事業環境は必ず変化する。例えば、前日焼成の個包装になれば、1日の余裕ができるため製造許容数を増やすことは可能になる。このように年初に考えていた展望と今では大きな隔たりがある。夢物語ではなく、環境の変化と状況を把握し、適切な将来予測が事業継続には何よりも重要だと思っている」

【Mヒシヤ食品】
〒655-0033兵庫県神戸市垂水区旭が丘2丁目1-10
TEL078-707-4510、FAX078-705-0123
▽従業員数=30人
▽最寄り駅=JR山陽本線垂水駅・山陽電鉄山陽垂水駅より約400m


コッペパン専門店「coppee+」
極端に大きいパンと極端に小さいパンの2種類
パンと具材の重量は同じ

 Mヒシヤ食品が運営する「コッペ・プリュス」は2015年5月、同社の新業態として月見山店をオープン。2018年5月には、同社本社工場に併設のベーカリーファミールを改装し「コッペ・プリュス」本店が誕生。両店で、好きな具材をその場で挟む新スタイルの楽しい食べ方を提案している。

 草野社長は「コッペ・プリュス」本店誕生の経緯を次のように話した。
 「コッペ・プリュス月見山店オープン後も『ベーカリーファミール』の営業は継続していたため、2業態のパン製品を製造しなければならなかった。弊社では、当日焼きの学校給食パンを優先していることから、学校給食パンを焼き終えてから店舗のパンを焼いた。コッペプリュスの商品はコッペパンのみだが、ファミールの商品は多岐に亘り手間も掛かった。焼きたてベーカリーを謳いながら、客が一番ほしい時間帯に焼きたてパンが提供できていなかったが、約20年間続けることができた。色々なこと考え合わせると、閉店して工場を拡張するという選択肢もあったが、コッペパンは最小限度のリスクであるため、コッペ・プリュス2号店とした。会社経営に影響を及ぼすようであれば、速やかに撤退する。なぜなら、撤退のリスクも最小限度であるため。その時点で卸業務の多くも撤退し、学校給食に特化することを決断した」
 同店舗コッペパンのコンセプトは、標準的なコッペパンの大きさでは何のインパクトも無いので、極端に大きいパンと極端に小さいパンの2種類にしたこと。生地は1種類のみ。商品はパンの重量と同じ重量の具材をはさむこと。
 売れ筋商品は、おやつコッペ系で粒あん&バター(260円)、宇治抹茶あん&ホイップ(240円)。おかずコッペ系で自家製・国産牛スジカレー(310円)、大山ロースハムサンド(270円)。ご当地コッペパンフェア第3回沖縄編としてタコス・コッペ(380円)も販売している。
 コロナウィルス衛生対策として、ウィルス除菌効果の高い次亜塩素酸水・加湿器をカウンターに設置。また、コロナに負けないぞキャンペーンを開催。おやつコッペ(ミニ)140〜190円の商品を100円で提供(小学生以下一人1個)。
 今後の展開は「あらゆる主導権を奪われてしまう百貨店には出店しない。ヒシヤ食品の本社工場での供給は2店舗が限界だと考えているため、もし3号店をオープンさせるとしたら製造設備を持った店舗にする。ヒシヤ食品と同様に環境の変化と状況を把握して慎重に店舗展開を考えたい。学校給食を犠牲にしてまで店舗展開を拡大するつもりはない」と草野社長は述べた。

【コッペ・プリュス本店】
〒655-0033兵庫県神戸市垂水区旭が丘2丁目1-10
TEL078-707-4510、FAX078-705-0123
▽営業時間=月〜土・祝日9時30分〜15時30分売切れ次第終了
▽定休日=日・祝前日
▽イートイン=テーブル4席、カウンター2席(ドリンクも販売)
▽駐車場=なし(近隣にコインパーキングあり)

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