学校給食を考える8

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休校により「子どもの栄養格差」広がる
 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、全国の小中高校では、3月から5月のおよそ3カ月間、多くの子どもたちが学校給食を食べられない状況が続いた。
 成長期の子どもたちの栄養面において、学校給食の果たす役割は非常に大きく、長期の休校により「子どもの栄養格差」が拡大した可能性があると考えられる。
 学校給食の提供がなかった期間、自宅できちんとした食事を食べていれば問題はないが、両親が働きに出ているため、昼食を即席麺や菓子などで簡単に済ませてしまうなど、各家庭により子どもの栄養摂取にはバラつきがあるようだ。
 2011年1〜2月、全国10市の児童生徒計4662人(有効回答数)を対象に、独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施した「平成22年度児童生徒の食事状況等調査報告書」では、学校給食のない日の昼食は、給食のある日に比べ、カルシウム、鉄、ビタミンB1・B2・C、食物繊維の摂取量が不足し、食品群で見ると、学校給食のない日は、牛乳、豆類、野菜・果物類が明らかに減少することが分かっている。

学校給食パンに関連する全国規模の情報交換システムを構築する
 全日本パン協同組合連合会監事で兵庫県学校給食パン・米飯協同組合理事長の池野元造氏は、学校給食制度や兵庫県の状況、将来展望などを次のように話した。
 全国でも、兵庫県を例に挙げても、戦後学校給食制度が始まってから今日まで、食パンとコッペパンを基本に作り続けている。現在の食生活と生活様式を学校給食に反映して、パンを美味しく食べ、好きになってもらうためには、食パンとコッペパンの提供だけではなく、時代背景に合ったバラエティー豊かなパンを提供していなければならない。食糧難で「食べるものがあるだけで有難い」という時代に定められた学校給食制度の主食を、ほぼそのまま「令和」で運用することは甚だしく無理を感じる。
 兵庫県の学校給食パンは、当日焼きがベースになっている。当日焼きには、後発業者が参入でき難いなどの利点がある一方で、制約が厳し過ぎて製造できる品目が限られる。共同工場の建設が具体化しかけたが、組合員各社の思惑もあり賛否が分かれ、現状把握と意見聴取に終わった。これらのことを打開するためには、学校給食制度そのものを見直す必要があると考える。
 大手製パンメーカーが販売しているパン製品には、当日焼成ではなく、中種を使用し、風味豊かでやわらかく、美味しいものが沢山存在している。旧態依然とした制度に沿って作られている学校給食パンとの格差は益々拡がり、将来に繋がる「学校給食パンの味」が残せない。
 新型コロナウィルスに関連する救済措置では、文部科学省から全国学校給食会連合会に対する通達は一本であるのに、兵庫県下の自治体ごとに請求の仕方が異なり驚いた。5年ほど前までは、国と県が方針を統一し各自治体をコントロールしていたが、規制緩和で自治体独自の運用が認められるようになったため、解釈とコントロールシステムが確立していないように思える。県給食会でも献立等を指定することもできず、単に材料を売買する機関になっている。
 兵庫県の学校給食提供業者の構成比は、パンのみ2社、米飯のみ2社、パン・米飯36社、合計40社。コロナウィルス対策は、組合から大筋の指示はしたが、詳細については組合員の裁量に任せた。対策は極めて重要だが、それ以上に会社の存続を左右する補償金・交付金の情報は充分に流した。
 全パン連の給食委員会が目標としているパン給食の週2回提供は、すぐに達成できるものではないと考える。兵庫県の場合、現在都市部で概ね週2回になっているが、郡部は週1回が多く、平均すると週1.5回弱になる。また、都市部での中学校給食が開始されていないこともあり、パン給食をどのように組み入れるかが課題になっている。全国的に提供業社減少に歯止めが掛からないことを考え合わせると、週2回のパン給食提供は無理がある。例えば、郡部が提供している週4回の米飯給食を炊飯センター新築で賄うとするならば、パンと米飯で成り立っている業者は経営が成り立たなくなり廃業してしまうと、週1回のパン給食も提供できなくなってしまう。
 兵庫県学校給食パン・米飯協同組合として学校給食パンの将来展望は、前日焼き化を想定して、当日焼きと遜色のないパンの品質にする研究を始めること。
 全パン連では、先ず県単位で留まっている学校給食パンに関連する日々の情報交換を、全国規模で網羅できる拡大システムに作り替え新しくを構築すること。日本パン技術研究所に開発を進めてもらっている国内産麦を使った学校給食パンをすぐにでも都道府県の学校給食会や教育委員会等の決定権者に提案すること。

コロナを通じて組合員の意識が激変した
 兵庫県学校給食パン・米飯協同組合専務理事の三宅義夫氏は、新型コロナウィルス感染拡大防止による現状や今後の組合運営の在り方などを次のように話した。
 3月分の学校給食費返還事業等は、全国の自治体より多くの学校給食納入業者に交付された。兵庫県でも全学校給食納入業者に交付されることが決まっている。
 4・5月の地方創生臨時交付金は、どこも厳しい状況で、兵庫県下の自治体窓口に直接陳情に行っている。但し、これは兵庫県学校給食パン・米飯協同組合としての取り組みで、組合員には自治体窓口で入手した情報を基に、書類の書き方や話し方、タイミングを指導している。
 新型コロナウィルスに関する様々な事象の中で感じたことは、全日本パン協同組合連合会が給食提供業者のために、パン産業振興議員連盟を動かすことができたからこそ、学校給食費返還事業等や学校給食提供業者を含む地方創生臨時交付金に結び付いたと思う。もし、全パン連が何もしていなかったら、何の補償も交付金支給も皆無だったような気がする。改めて、全パン連の必要性と組織力を痛感した。
 コロナウィルスを通じて被害は莫大であったが、組合員の意識に激変が見られ、今までの他の人にやってもらって当たり前から、自らが能動的に行動するようになった。この成果は、金銭では置き換えられないことで、大きな副産物が生まれた。また、兵庫県は広く、細かく分かれているため、組合員同士の接触が一部を除き気薄だったが、コロナ禍によって窮状を訴える機会もでき、コミュニケーションが円滑になった。加えて、全パン連青年部総連盟の幹部より、頻繁に自県状況をメールでもらい、連絡網の重要性と情報の有り難さを再認識した。このことは、全パン連全体に波及しなければいけないと思う。ITを活用した簡易テレビ全国理事長会を行うようなシステムが必要なのではないだろうか。せめて、メールやLINEのインフラ整備が最低限必要。
 兵庫県のコロナウィルスによる学校休校で給食に及んだ影響を年間で考えると、195日の提供日に対して45日間がなくなり、約23%の収入が減少した。そのうち3月分は学校給食費返還事業等で加工賃の90%が支給されているので、今のところ実質減収は約15%。学校給食提供業社は、零細企業がほとんどを占めているので非常に厳しい状況であることは明確。
 兵庫県全体の児童数は、約28万人で毎年1.5%ずつ減少するという統計があり、20年後には約20万人になる。現時点で、年間売上が1億円(1万5千食/日)に達していなければ企業として成り立たなくなる。ということは、児童数の減少以上に給食提供業社を集約しなければならないが、当日焼きである以上、さらに集約を進めることは不可能。
 新型コロナウィルス感染拡大防止によって個包装化(衛生面)がクローズアップされた。また、アフターコロナの食育支援センターによる学校給食パン納入の第一条件は、前日焼き(危機管理対応)になっている。個包装化と前日焼きが標準化すれば、1社当たりの生産能力が向上し、集約化が容易になると考えている。「児童が減る→納入業社を集約する→納入各社はそれぞれに採算がとれる規模になる」という構造が出来上がれば、子どもたちに迷惑を掛けずに学校給食パンが提供できると思っている。
 個包装によってプラスチックゴミの増大が懸念されるが、バイオマスを使用した包装材は拡大傾向にあり、バイオマス包装に切り替えることで、近い将来は資源問題をクリアできると考えられる。

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