木もれび第81話
M木輪 芳野栄氏
社員の良いところに目を向ける

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 数年前、社内勉強会で「自分の良いところを知ろう」と題して、社員にじっくり自分と向かい合ってもらうことがありました。
 自分に自信や誇りが持てない、自分が何をやりたいのかがわからないという若者が多いと聞き、木輪の社員だけでも、そのようなことがないようにと思い、自分の良いところ、好きなところ、また、自分に欠けているところ(未熟なところ)をあげてもらいました。
 結果は自分に欠けているところは、思っていたより多くあがっていましたが、自分の良いところとなると、全員その数は思った以上に少ない結果となりました。日頃から自分との向き合い方が少ないなと思いました。どんな小さなことでもよいので、まず自分の良さをしっかり認識し、そこを意識して伸ばし、仕事やこれからの人生を生かしていくことが大切であり、そうすることで幸福な人生の方向に進むことができると思っています。
 勉強会の後、一人の社員に「自分の良いところいくつありました?」とたずねたところ「十個くらいでした。」と返ってきました。私が感じるところ、その社員には、もっとたくさん良いところがあるだろうと思い、「じゃあ私が、あなたの良いところを三十個あげてみるね」と言い、すぐにその場で十個ほど挙げました。日頃から感じている良いところはすぐにあげることができても、まだ私が気づいていない部分で、その社員の良いところをさがすとなると、むずかしくなりました。翌日から時間をかけて、その社員をよく観察しながら一つ一つあげていく日が続きました。
 二十個ほどその社員の良いところがあがった時に、私の心に変化があらわれはじめました。よく観察し良いところをさがしていくうちに、その社員のほんのちょっとした良いところを発見できた時には、「この社員にこんなすばらしいところがあったのか」と何か大発見したようにうれしくなり、心が喜びで満たされていくのです。同時に、その社員に対して日頃から気になっていたところはうすれていき、次第に自分の心の中で気にならなくなっていくのです。また時間が経つにつれて、そのほんの小さな良いところがとても大きな良さに変化していくのです。そうしたことを一つ一つくり返していく中で、その社員が私の中で、次第にとても立派な良いところばかり持ったすばらしい社員へと変化していくのです。また、その社員が私以上のものを持っていることに気づき、これまで以上に尊敬の念が湧いてきました。すばらしい人間として一層輝いているのを感じます。このようなすばらしい社員が木輪で働いてくれていることに感謝の気持ちでいっぱいになってきました。
 人は皆、誰とも違う良いところを持ってこの世の中に生まれてくると言われます。経営者はその良いところにしっかり目を向け、その人の良いところを伸ばせる環境をつくっていくことが大切だと思いました。また、人の良いところに目を向けることが少なくなると、人の良いところとは反対に、その人の悪いところや欠点に目が向きはじめ、そこが気になりはじめるようになるものだとも思いました。人の悪いところや欠点ばかりに目がいってしまうのは、正しくその人を見ていることになりません。自分の「心のクセ(自我の意識や業の意識が過剰に働く)」が知らず知らずのうちに、そうした偏った見方を作ってしまうのだと思います。  素直な心を身につけることで、一人ひとりを正しく見ることができ、社員の良いところに目を向けることができるようになると思いました。さらにそうした社員の良い所を探し求めていく経営者の姿は輝いており、きっと社員にも良い影響を及ぼしているものと思います。社員との良好な信頼関係も、そのような姿から生まれてくるのでしょう。

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