学校給食を考える12

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 長崎県学校給食パン米飯協同組合理事長の宮田光男氏は、同組合の現状、教育委員会との関係性、新型コロナウィルス感染拡大防止による影響、今後の給食事業の展望などを次のように話した。
《認識のズレ》
 長崎県学校給食会との契約は当日焼き。但し、24時間前まで当日という規定があり、前日の午後に焼成するパンは当日焼きとなる。
 組合員数は11社。離島の五島はパン給食を止めたが、児童・生徒からパンが食べたいという要望が出されたため、急遽フジパンM長崎販売部より焼成冷凍パンが供給されている。そのため、通常の学校給食パンよりも高いパン給食になっている。昨年撤退した壱岐も同様の措置が取られているように思う。壱岐は、市長が出身地域を重用するようで、教育長なども同地域から呼び寄せているようだ。ふるさと創生に関連して、市の厨房設備を建設した時、パンと米飯給食を提供していた業者の米飯部分を市で賄うことになり、週に3回の米飯給食を受け持っていた同社は、週に2回のパン給食だけでは会社経営が成り立たず非常に厳しい状況に陥った。さらに同社は、トンネルオーブンを導入して3年目、息子を関西で修行させ郷里に戻ってきた矢先だった。
 業者(組合員)から視れば「仕事を剥奪された」だが、行政側は「事業を肩代わりしてやっている」という感覚でしかなく、その溝は埋まらない。挙げ句の果てには、米飯はパンよりも安いと必ず言われ、全ての給食を米飯にすると同じ給食費で提供回数が増やせるとも言われる。児童・生徒のために学校給食をどのように改善するかではなく、親(大人)の顔色を伺った言い訳に過ぎないと思っている。食育基本法など有名無実で大人の都合で何事も決まってしまうのが、学校給食の実情。
 私が危惧していることは、給食費を上げずに児童・生徒は十分な栄養が摂取できているのかということ。事実、全国統一学力判定試験でも長崎県の成績が芳しくなく、給食費の高い自治体は成績が良い。給食費が高いといわれる富山県や新潟県と長崎県を比較すると1カ月に約1,000円の差がある。
 九州では、朝食給食の話題は出ていないが、他県では動きがあるようで、理にかなった施策だと思っている。人間が朝起きて、キチンとした食事を摂らなければ、あらゆることを吸収する力が下がる。朝食の場合、パンは吸収が早くエネルギー転化のスピードも早いため米飯より良い。パンには糖分も含まれているため、脳の活性化にも役立つ。
《コロナの影響》
 3月の学校給食費返還事業等による補償金支給の件で、県庁に何度も足を運んだが、毎回けんもほろろの対応だった。口では「学校給食存亡の危機だと思っている」というが、何もしようとしない。総理が給食を止め、文部科学省や農林水産省から多くの通達が届いているにも関わらず、首長の考え方が全てを支配していたようだ。
 4・5月の地方創生臨時交付金は、窓口が総務省もしくは内閣府に変わったため、3月分と同様に県庁に何度も足を運んだ。今度は「給食のパン提供業者」という文言がないといわれた。文部科学省初等中等教育局の課長から直接長崎県に電話をしてもらっても動かない。驚くほど動きが鈍い。未だに明確な答えが返ってきていない。
 話は前後するが、3月は2日間のみパン給食を提供。4・5月は併せて約10日間パン給食を提供しただけ。県の体育保健課の担当者は現場を余りにも知らず、6月や9月以降の学校行事の中止、7・8月の夏休み短縮で授業が増え、学校給食を提供する機会も増えて学校給食提供業者は儲けているという先入観でものごとを見ている。何か言うと「議会承認が必要」という。議会は、毎日のように開らかれているように思うが3カ月に1度で、9月で承認されなければ、自動的に12月まで延ばされる。その間も人を使い、時間をかけて給食用のパンを製造している。その運転資金はどこから出ていると思っているのか。
 今まで私たちは「子どもたちのために」という言葉で頑張ってきた。大前提の「子どもたちのために」は変わらないが、言うべきことは、はっきりと言わなければならないと思っている。また、頼まれれば「嫌」と言わなかった。これも、結果的に行政側を甘やかしたことになってしまっていたようだ。提供回数でも、何も週に3回4回を要求している訳ではない。全国的に週2回になり、それが継続することを望んでいるだけ。
《学校給食事業の展望》
 学校給食制度の問題点は山積しているものの、業者側からのPRはほとんど行っておらず、栄養士とのコミュニケーションもあまりない。現場同士で知らないことが多いのだと推測しているが、積極的に対話の場が持てていない。業者側が一歩踏み出せば、構えているほど難しくないのかも知れない。父親が一日1本のジュースを買うのを止めて、その分を子供に投資をしてほしい。父親が我慢した金額で美味しく栄養価の高い学校給食を食べさせられることができ、子どもの学力は向上し身体も強くなる。
 今のところ、公立小・中学校と県立に付随した幼稚園が組合の学校給食受け持ち範囲で、その範囲が広がることや児童・生徒が増えることは考えられない。私立は市販のベーカリーが提供している。将来を考えると、後継者不在や給食提供日数減が要因で存続できなくなる業者の担当分を取り合う状況になる。その時に仕事が受け切れる体制を整えることが展望になる。パンは、誰にでも作れるというものではなく、主食として置き換えが難しい。現に、パンが製造できる給食センターは全国でも極めて少ない。その点も行政側に把握していただきたい。
【長崎県学校給食パン米飯協同組合】
〒851-2126長崎県西彼杵郡長与町吉無田郷2011-17宮田製パン所内
TEL09-883-2022、FAX095-883-2353


 宮崎県製パン協同組合理事長の長田寛氏は、学校給食提供業者の現状や学校給食制度の問題点と改善点などを次のように話した。
《提供業者の立ち位置》
 宮崎県学校給食会との契約は当日焼きと前日焼きの併用。前日焼きは、配送に時間を要する地域。
 同組合は6社で構成され、パンのみを提供する工場が3社、パン・米飯を提供する工場が3社。20年以上前までは、延岡・日向(県北)も加入していたが、退会し独自の協力会を運営している。提供食数は、週に約11万食で、担当エリアの小・中学校約120校に納入している。内訳は、パンが平均2万食、米飯が平均9万食。パンの提供回数は、週に2回。一部1回の地域もある。生産には大きな問題はないが、配送が課題。提供個数の少ない学校ほど山間僻地にある。
 生徒数の減少に伴い、朝食給食を耳にするが、学校給食会からは一切話はない。土曜日給食は、時々話にでるが、すぐに断ち切れてしまう。学校は給食に携わる人を増やさなければならず、労働時間も長くなるため、積極的な姿勢ではない。
 新型コロナウィルス感染拡大防止により3〜5月の学校給食は「0」だった。6月から徐々に回復し始めた。長く学校給食を製造しているが、今回のようなことは初めて。3月の学校給食費返還事業等による補償金は全ての組合員に入金済みで、宮崎県の場合、県と市町村から4・5月の加工賃の約80%が補償金として支給された。おそらく、地方創生臨時交付金のカタチを変えて交付したのではないかと思っている。6月の学校行事中止や7・8月の夏休み短縮、9月以降もほとんどの行事が中止になり、授業が増えた分学校給食の提供機会も増えて助かっている。それに、持続化給付金を併せると、ほぼ昨年並みになっていると思う。そのような意味からも学校給食会も頑張ってくれたと思っている。宮崎市長・副市長がともに佐土原町の出身であるため市役所に赴き、市長・副市長に直訴した。その効果も現れたのかも知れない。
《学校給食会と給食制度の問題点》
 年に1回、学校給食会と新しい製品作りを協議する機会がある。県特産品や根菜類(ペースト・パウダー)を使用した新製品を検討するもの。学校給食会との関係性が良好であるが故の情報交換であると思う。
 学校給食制度は、複雑でいく通りもの解釈ができる。基本的には何事についても明記されておらず、業者側に不利な解釈が多くの場合用いられる。そのような制度の中、市町村の栄養教諭は平均2〜3年で交代し、人間関係が構築し難い。癒着等を防ぐためという考え方は理解しているが、栄養教諭の裁量によって大きく対応が異なる。また、学校給食の担当者たる者は、給食提供工場を定期的に巡回し、現場を知らなければいけないと思っている。デスクワークだけでは判断できないことが山ほどある。昔の担当者は、パンの作り方を理解していたが、今は自分から積極的に接点を持とうとしない。
《学校給食事業の展望》
 先は暗い。現状を維持し継続できれば良い。しかし、子どもたちの喜ぶ顔が目に浮かぶと、朝が早くても深夜作業になっても、頑張らなければいけないという気持ちになる。
【宮崎県製パン協同組合】
〒880-0211宮崎市佐土原町大字下田島9199
TEL0985-73-0046、FAX0985-73-0899

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