船橋屋製菓M〈福島県相馬市〉
創業130余年。和菓子、洋菓子、パンと業態拡大
今後はステイホーム型消費の商品を開発する

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羽根田社長

本店の店舗外観

 船橋屋製菓M(羽根田万通社長)は1888年(明治21年[浅間山大噴火の年])、式菓子(祝儀や仏事などの儀式で用いる菓子。現在は冠婚葬祭や祝宴に用いる引出物の意)の製造で創業した。相馬市で船橋屋製菓を知らない人はいないほど市民に馴染みがある。1999年には、同社の上生菓子を天皇皇后両陛下もお召し上がりになった。市街地に建つ蔵造り風の本店店舗からは風格がうかがえる。

 同社本店は、JR常磐線相馬駅から徒歩約10分の市街地に位置する。創業130年以上の老舗でありながら、敷居が高いという訳でもなく、どの菓子も比較的リーズナブル価格。職人の技が光る上生菓子や素材にこだわった羊かんなど本格的な和菓子が並ぶ一方で、子どもや女性が喜ぶプチケーキなども販売し、上生菓子・ケーキ・焼き菓子・せんべい・御贈答用菓子が揃い、老若男女を問わず幅広い客層に親しまれている。
 和菓子をベースに洋菓子に業態を拡大し、戦後にはパン製造を始めた。その後、学校給食用パン製造の依頼があって給食事業に参入することになったという。パン・米飯工場は本店北側の駅前通の先にある。最盛期には、相馬市内に3店舗、宮城県南部に4店舗のパン直売店を所有しており、卸パンも製造していた。
 4代目社長の羽根田氏は、大学卒業後、本社がニューヨークにある米国系商社に入社した。
 「その会社の先輩から『ニューヨークに本社がある商社で働くことは夢の実現かも知れないが、日本は中小企業を育み、健全な経営を行うことが務めで、語学を活用して派手な生活をしようと思ってはいけない』と言われ感銘を受け、製造業に足を踏み入れた」。
 同社の和菓子の技術は、新宿中村屋に由来するという。
 羽根田氏は「約40年前の4〜5年間、2カ月に一度の頻度で技術指導に来てもらった。その時に餡の炊き方などほとんどの製造方法を変えた」という。
 「パン製造には和菓子製造の倍の人手を要するため人件費の支払が大きくなっただけではなく、パン工場で働く職人たちの顔が変わってしまったことがパンの直営事業から撤退した理由。朝が早く、しかも長時間労働のため、すっかりやつれてしまった。
 しかし、界面活性剤(乳化剤)やトレハロースなどは福島県で最初に弊社が導入し生産性向上を図った。東北地方では、個人ベーカリーの経営が成立しない。客はインストアベーカリーまたは大手製パンメーカーの商品に流れる。また、相馬市の特長かも知れないが、代々続くリテイルベーカリーはなく、新規開業しても子や孫に継承することはなく、一代限りで店を閉める」と羽根田氏は地域の実情を話した。
 現在、学校給食用のパンと米飯を合わせて1日平均約5千食を製造している。
 船橋屋製菓全体の売上構成比は、和菓子約45%、洋菓子約45%、学校給食約10%。学校給食の内訳はパン1:米飯2。
 学校給食のパン・米飯工場では、多くのマンパワーが必要だという。
 「それは、異物混入を防ぐため。異物を検出する機械は導入しているが、最後は人の目。パンは他社でも同じだが手間が掛かる。また、炊飯ラインはほぼ自動化されているが、準備と機械点検は人が行う。ということから、人の力が不可欠になる」
 売れ筋商品は、和の世界で銘菓とされている「まどか万頭」。弾力がありながら柔らかく、モチモチとした皮の旨味で人気。黒糖などを皮に使い漉し餡を入れたものと皮に味噌を使って白餡を入れた2種類があり、自家炊き餡を使い、ふかし上げるまで一つ一つの工程に手間ひまをかけて仕上げるこだわりの逸品。創業時に「皮のおいしい饅頭」を目指し二十年来の想いで生み出し、販売から数年で看板商品に成長した。また、同社を代表する菓子の一つに「カステラせんべい(相馬せんべい)」がある。カステラのような味の洋風せんべいだが、甘さはカステラよりも控えめで、卵の優しい味わいが際立つ。しっとり、もっちりとした弾力ある生地も特徴的で、大人の掌より大きく食べ応えがある。大正時代には、皇后陛下にもお買い上げいただいたという。
 洋菓子では「まるでケーキの宝石箱☆プチケーキ(各種)」が、楽天市場夏のスイーツグランプリ2015バースデースイーツ部門で部門賞を受賞した。
 同社の作る学校給食用パンは特別な旨味があるという。
 「先ず、材料は政府から支給される無漂白小麦粉には風味があり、イースト・砂糖・塩・ショートニングなど悪いものは何もない。そして、中種方式で時間短縮をすることもなく、学校給食製造のセオリー通りに作っており、余計なものは入っていない。人工的なものは唯一ショートニング。気温や湿度によって発酵時間の調整には神経を尖らせている」
 羽根田氏は、今後力を入れたい商品と将来展望を次のように述べた。
 「HACCP義務化や食品表示法の改正など、地方の中小企業が対応できる範囲を超えつつある。世の中の流れが非常に早い。IT革命に始まりAIなど、この先吸収していけるのかと心配になる。とても、追い付けるものではない。そこにコロナで進化が著しく早くなった。家庭消費型の商品で、おいしくて便利な商品を作りたい。
 創業の起源は式菓子製造だが、最近、結納は簡略化され、結婚式の引き菓子は横文字ブラントになり、仏事にも饅頭が使われなくなった。大きな饅頭は何年作っていないだろう。和の文化が大きく変わった。今回のコロナでは、ステイホーム型の商品消費という考えもしなかったカタチに変わった。幸いにもプチケーキ各種がコロナ前から人気だったので、コロナ禍以降は発送量が半端ではなくなった。今後もステイホーム型消費にスポットを当てた商品開発を行う」

【船橋屋製菓M】
《船橋屋本店》
〒976-0042福島県相馬市中村字大町73
TEL0244-35-2784、FAX0244-36-7203
▽営業時間=9時〜19時30分
▽定休日=元日を除く年中無休
▽URL=http://www.cestsibon.jp/
《甘未処ゆったり庵》
船橋屋本店隣り、TEL0244-35-2784
▽営業時間=11〜16時/オーダーストップ15時30分
▽定休日=毎週水・日曜日
《船橋屋南店》
〒976-0035福島県相馬市程田字潜石51
TEL0244-35-1680、FAX0244-35-1560
▽営業時間=9時〜19時30分
▽定休日=なし
《船橋屋桜ヶ丘店》
〒976-0042福島県相馬市中村字桜ヶ丘171ヨークベニマル桜ヶ丘店内
TEL0244-35-4338
▽営業時間=10〜19時
▽定休日=なし(但し、ヨークベニマル桜ヶ丘店休日は休み)
《瀬止凡[セシボン](船橋屋五日町店)》
〒989-2351宮城県亘理郡亘理町字五日町19
TEL0223-34-4657
▽営業時間=10〜18時(土・日・祝は17時まで)
▽定休日=土・日・祝日は休む場合がある
《船橋屋黒木工場》
〒976-0052福島県相馬市黒木字薬師堂21
TEL0244-36-1561、FAX0244-36-4177
▽敷地面積=約1800坪

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店内の様子

洋菓子のショーケース