Costeaux French Bakery(コストー・フレンチベーカリー)
〈カリフォルニア州〉
老舗ベーカリーが発案したパン寄付プログラム
顧客とともにパン作りの技術で社会貢献する

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ウィル・セッピさん
 

ビスコッティなど

本店の店舗外観

店内の様子

 「コストー・フレンチベーカリー(以下、コストー)」はカリフォルニア州ヒルズバーク市にある、1923年から続く老舗ベーカリー。2007年に一度レポートしたが、その後、より大きなパン工場に製造拠点を移し、地元飛行場にテイクアウト専用店舗の開店やメキシカンベーカリーをオープンし、事業拡大を果たした。

 ところが1年前、新型コロナウィルスの感染が拡大し、カリフォルニア州でも自粛要請が出されて状況は悪化。どの店舗も客足は途絶え、卸業も激減した。
 コロナ前から既にギリギリの生活をしていた食品関連やワイナリー、ホテル業界などの接客業者は職を失い、支援が必要になった。一時期、パンの供給網が機能しなくなった上、パニックに陥った人々が買い占めをしたので、スーパーの棚からパンが消えたこともあった。
 「コストー」社長でCEOのウィル・セッピさんは何ができるかを考えた。
 「弊社でも3日で、120人中80人の従業員を解雇しなければいけない状況でした。以前に比べると少ない量ですが、パン製造部門が稼働しているので、生産量を増やして、フードバンク(困窮者に食糧を供給する民間組織)などにパンを寄付しました」
 地元スペイン語圏の人々に食糧を支援する組織「コラソン(心臓の意味)・ヒルズバーク」には、当初、毎週3600個のディナーロールを寄付し、今も約3000個を提供している。
 セッピさんはこの時「コストー・クラフツ・ニード・プログラム」を立ち上げた。同プログラムは毎月2万斤のパンの寄付を目標に、最初の2500斤のパンを「コスト―」がフードバンクなどに寄付し、それ以上のパンは、顧客からの5ドル(約550円)のバーチャルローフ寄付数と同じだけ、ベーカリーが寄付するという仕組み。オンラインショップのバーチャルローフ購入ページには「このパンはあなたに届きません」という注意書きが掲載されていた。
 「私たちが得意なパン作りを生かして、地産のバーチャルなパンを買ってもらうことで、貢献ができました。コロナ禍で、人々は外出せず家にいましたが、多くの人が地域社会を支援するために何かをしたいと思っていました。『ニード・プログラム』は、善意がある人々に『もう一つこのような支援方法がありますよ』と提案できたことが良かったと思います」
 立ち上げから1年が経ち、バーチャルローフの寄付数が減ってきているので、オンラインショップだけでなく店舗でも呼びかけなどを行って人々に知ってもらう必要があるという。数カ月前「コストー」のチームが、フードバンクで配る食品の箱詰めボランティアした際、黒板に「現在の需要は、通常時の235%」と書いてあったという。今でも、スーパーなどのパン寄付は、以前のレベルに戻っていないそうだ。
 他にも「コストー」では、高校生や高校卒業生を迎え入れ、インターンとして教育する支援を行っている。彼らは働きながら、ベーキングやメインテナンス、食品衛生管理などを学び、そのまま入社する機会もある。  「大学に行かなくても、希望すれば、このように良い仕事があると、彼らの新しいキャリアへの扉を開けることができます。私たちも人手が必要です」
 現在の従業員数は60〜70人。工場でのパン製造は以前のように毎日は稼働していない。商品数を減らし、工場生産分を店舗での生産に戻した。まだカフェでの店内飲食はできないが(2月中旬)、週末には、観光客がポーチで道行く人々を眺めながら食事を楽しんでいる。バタークリームとチョコレートをアーモンドクッキーで巻いたモカフロリンティンやデニッシュ類、メロンパンのようなコンチャも人気だ。
 長年販売してきた箱入りランチ(サンドイッチ、ポテトチップス、フルーツサラダ、デザート入り)は、コロナ禍で需要が増えた。また、親のボランティアが学校内でランチを作れなくなったので地元の私立学校へ箱入りランチを配達するようになった。
 最期に、社会への貢献と、会社のビジネスを成り立たせることのバランスについて聞いてみた。
 「それは課題です。私どもは2023年に100周年を迎えます。その間、支援してくれた地元の人々に、パン作りの技術を使って、貢献していきたいと思っています。一方通行ではなく、双方向で行うことです。ビジネスとも両立しなければいけません。地域社会と家族を大切にすることが、会社の二つの本質的価値観なので、今までも商品を寄付してきましたが、『ニード・プログラム』が当店の顔になるように強化し続ける方法を会社として見つけ出す必要があります。このようなプログラムが必要でない状況が理想的ですが、現実にはまだまだ必要とされています。まだ始まったばかりです」

【Costeaux French Bakery】
▽住所=417 Healdsburg Avenue Healdsburg, CA 95448
▽電話=(707)443-1913

写真・文/田原知代子

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