ブーランジェ・ジュリコのお店〈京都市伏見区〉
コンセプトは売れるパンを作る
リテイルベーカリーにしかできないことを実践

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吉田淳志氏

店舗外観
 

菓子・惣菜系のパン棚

店舗内の様子

 「ブーランジェ・ジュリコのお店」は、2011年10月5日にオープンした。オーナーシェフの吉田淳志氏は、異業種の経験を一新してパンの修行をはじめ、ベーカリーの独立開業を果たした。

 デザインの専門学校を卒業した吉田氏は、大阪の印刷会社に就職したが約3年で雑誌社に転職、その会社で約10年勤めたが、客の喜ぶ声がダイレクトに聞けるベーカリーになろうと一念発起したという。
 「デザインには自信がありましたが、新卒で入った会社では希望どおりの部署に配属されませんでした。それでも3年間は頑張って仕事を身に付けようとしましたが、どうしても専門学校で学んだ知識やセンスを活かして編集がやりたかったため雑誌社に転職しました。元々、ものづくりが好きでその頃からパンに興味を持ち、独学でパンを作っていました。家の設備では思ったようなパンを作ることがでなかったことと、誌面作りは自分が納得していても、読者がどのような反応をするのか、役に立っているのかが明確ではなく、ダイレクトに生の声を聞くことができるベーカリーになることを決心し準備を始めました。私の中では、誌面もパンも同じようなもので、平面と立体の表現方法が異なるだけで、ものづくりには違いありません」と吉田氏はベーカリーに進んだ経緯を語った。
 雑誌社を退職してから、京都府長岡京市に本社がある「ルビュール」の宇治店のオープニングスタッフとして働いた。
 「家では、手捏ねで生地作りをしていましたが、大変な思いをすることが多くなり卓上ミキサーを買いました。また、家庭用のホイロ付きオーブンを導入するなど、趣味としてはかなり本格的なパン作りでした。  製パン理論は、本を読んで勉強しました。専門学校への入学も考えましたが、費用対効果で計ると現場で修行する方が良いと判断しました。いくら知識があっても、座学と現場で働くことの違いは十分承知していました」
 ルビュールでは、短時間に様々な技術やベーカリー経営に関するノウハウを身に付け、当初からの目標であった自店を構えることができた。
 吉田氏は「ルビュールの木下勝博社長は、フランス人ブーランジェのドミニク・ドゥーセと親友で、私も懇意にしていただいています。開業時には、設備の一部やばんじゅうなどを譲ってもらいました。三重県鈴鹿市にある「ドミニク・ドゥーセの店本店」で木下社長の長男が店長に就いていたことも好転に大きく影響したと感謝しています」
 店名は、吉田氏のあだなに由来する。「小学校の時からジュンジを言い易くして『ジュリコ』と呼ばれていましたので、地元で店を持つのなら、大勢の友人も分かって親しみのある店名が良いと考えたのです。また、〜のお店は、フランスのブーランジェリーはドミニク・ドゥーセの店のように名前に店を付けることが主流なので『ブーランジェ・ジュリコのお店』に決めました」
 パン作りのコンセプトは、売れるパンを作ること。開業するに当たり周りから、どんなパンを作りたいのかという質問をされて、どのように答えたらよいのか迷ったという。
 「商売である以上、売れなくては意味がありません。時流によって売れるパンは変化するため、その時々においしくて、安くて、売れるパンとしか言いようがありません。『近隣から愛されるパン作りを目指しています』と言っても、その検証は困難で、売れていることが愛されていることだと考えます。自己満足だけで終わらせたくはありません。そうは言うものの、あんぱんやクリームパンばかりを作っている訳ではなく、商品構成や味、ビジュアルなど一線を譲れないこだわりは当然持っています。いろいろなパンに挑戦しており、フランスパンの小物などはよく売れます。お客様は、パンのプロではありませんので、食べておいしいパンが売れるパンだと思います」と吉田氏は語った。
 店舗は、京阪藤森駅から国立病院機構京都医療センターに向かう経路に位置するため客層は、年齢や性別を問わず幅が広く、朝は医師や看護師が目立つ。駅に通じる商店街は少し前まで、シャッター通りと化していたらしいが、積極的な活性化活動の甲斐があって元気を取り戻した。喫茶店が他の商店街に比べ多く、行列ができることもしばしばらしい。年に2回100円均一セールも開催され多くの買い物客で賑わう。これが地域の特性に繋がる。
 売れ筋商品は、1位がダントツで、牛すじとじゃがいもたっぷりの自家製カレーを包み、カリッと揚げた食感の「牛すじカレーパン(140円)」、2位が食パン。中でも、湯種を使った角食パン「メゾン(180円)」と天然酵母を使用し植物性乳酸菌の力でふわふわに仕上げた角食パン「シャトー(260円)」、3位が表面のビス生地をメープルシュガーでカリッと中にもメープルが隠れてしっとりした「メロンパン(100円)」。(紙面の価格は、消費税増税に伴う価格改定以前の金額)
 売れる時間帯は、昼食時に集中しているという。夕方も忙しいが昼とは比べものにならない。
 「病院が近いこともあって塩分70%カットの『減塩食パン』を発売しました。高血圧や心臓病などで医師から塩分摂取制限をされている方や腎臓が弱っている方にお薦めしています。
 今後は、小麦粉や米粉を使わない低糖質食パンの開発を考えています。低糖質食パンということでは『パン ド ミ』しか薦められないので、更に踏み込んだ商品を作って喜んでいただきたいと思います」と力を入れる商品の絞り込みを明らかにした。
 店舗の運営は、パン製造を吉田氏が担当し、販売はルビュール宇治店の販売マネージャーの経験を持つ沙也加夫人が一手に引き受け客の反応や要望を吉田氏に伝えている。ジャムパンは吉田氏の発想外だったが、夫人から要望が多いことを知らされ、いちごジャムを作って、いちご型にパンをアレンジして店に出したところ、人気商品になったという。まさに売れるパンを作るというコンセプトの実践と客の声をダイレクトに反映した結果だといえる。
 「夏場には、かき氷を販売します。ジャムの延長線上でシロップは自家製です。パンが売れない季節ですので多少の売上UPに貢献するばかりか、かき氷を食べに来るお客様がパンを買ってくれる可能性も拡大します。しかし、ベーカリーとしての路線は外さず、プライドを保つため、例え売れるものだとしても、おにぎりは絶対に出しません」と吉田氏。
 消費税の増税対策は「5%から8%への消費増税ならびに小麦粉などの原材料費高騰の為、4月1日より価格を改定させていただきます」と店頭に表示している。しかし、現状価格を維持した商品も多く、トータルで約3%上がるように内税表示にしている。
 「藤森駅前に100円均一のベーカリーが進出してきました。伏見区では、100円均一ベーカリーがどんどん増えていますので、今後は今以上に厳しくなると予測しています。そのためには、リテイルベーカリーにしかできないことで対抗するしかありません。味での差別化が最優先ですが、正反対に90円のコロッケサンドや70円のリングドーナツを出しました。100円均一ですので、100円を下回って売ることは出来ないと考えました。
 特定の商品を格安で販売することもリテイルベーカリーにしかできないことです。スタッフたちには、100円均一ベーカリーには出来ない接客をするように指導しています」
 吉田氏は今後も「売れるパン、同じクォリティのパンを作り続けます」と展望を述べた。

【ブーランジェ・ジュリコのお店】
〒612-0875京都市伏見区深草枯木町41-8
TEL075-643-3933
▽営業時間=7〜19時
▽定休日=日曜日+祝日
▽店舗面積=18坪
▽主な設備=スラントミキサー、縦型ミキサー、オーブン、ホイロ、シーター、フリーザーなど
▽パンの構成比=ハード系30%、菓子パン30%、食パン10%、惣菜系等30%▽最寄駅=京阪電鉄藤森駅から徒歩約8分(赤い看板と大きなオリーブの木が目印)
▽駐車場=無

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牛すじカレーパン

角食パン・シャトー

メロンパン(メープル)