ケルン〈神戸市東灘区〉
コンセプトは一度決めた頂上を変えない
神戸のパン文化深耕に役立てる企業に

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壷井豪氏

ケルン本社外観
 

御影本店外観

店舗内の様子

バゲット+(プラス)

 1946年創業のMケルンは、神戸エリアに直営9店舗、FC2店舗を展開、「パンを通じて地域の豊かな食生活に貢献する」をスローガンに掲げ、地域密着型のベーカリーを貫いている。昨年9月1日、壷井豪氏が3代目の社長に就任、68年間の伝統を守りつつ、新生ケルンの躍進に挑戦している。

 壷井豪氏は、壷井家の二男として神戸で生まれ、育つ。大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、大阪府内のベーカリーに入社。その後、関西電力グループ系の会社で営業・顧客管理の仕事を経てケルンに入社した。入社後も京都の老舗ベーカリーで経営や技術を学ぶほか、日本パン技術研究所の100日コースを修了、ドイツ/バイロイト市にある「Inhaber Fuhrmanns Backparadies」のベッカーマイスターの下でドイツパンの基礎とドイツ文化を習得した。
 「卸販売や学校給食パンを製造する会社として昭和21年に創業しましたが、現会長の代になって学校給食や卸販売をやめ直営店舗の展開を始めました」と壷井氏は同社の歴史を語った。
 現在、「ケルン」ブランドの直営店8店舗と「ベッカーブルシュ」ブランドの直営店1店舗を展開している。また、FC2店舗も展開している。
 ケルンは、親子3代に亘って買い続けてもらえるという、地域密着型を貫いている。奇抜なことを試みたり、チャンスの波に乗って大きなことを狙ったが故に失敗したケースは多いが、同社は企業永続の基本を忠実に守り、目立つことや奇をてらったことはせず、地道に地域の顧客に根付いてきた。今後もケルンブランドは、格好を付けずみんなが欲しがっているパンを作り続けるという。
 ベッカーブルシュは、少し質を上げて特定の顧客を対象にしており、ケルンとは差別化を図っている。狙い通りに、同店の持つ特徴を発揮し、売上が順調に推移しているという。
 社長就任後、次のようなことが変わったという。
 「社長就任前と現在の業務内容は、自分の中ではそれほど変わったとは思っていません。しかし、社長が持たなければいけないことやとらなければならない選択肢、犠牲になることは実感しています。自分の見る目が変わるだけでなく、周りからの見られ方が変わって、従業員たちとの距離が少しずつ開いていくことを感じます。
 今までは、全てのお客様や従業員を大切にすることを採り入れていましたが、私自身の考えとして、適材適所を心掛けることと職場での環境格差をなくすことを考えました。店毎に工程や作るパン、出勤時間が異なり、労働環境の格差が生じていました。社長就任後第一に、それを修正しました。出勤時間の繰り下げや就業時間の短縮によって、ほぼ達成できましたが、焼成回数が減るなどの弊害も生じています。それを更に改善することが、各店舗の課題です。お客様にご迷惑をかけることは絶対にできませんが、従業員も同様に大切にしなければいけないと認識しています。
 3代に亘って勤めてくれてケルンを支えてきたベテラン従業員と20代前半の従業員の意識を摺り合わせることが最も困難でした」
 経営方針は、先代、先々代からのベースを40%継承し、60%は自身の考えを出そうとしている。
 「社是の『人材は宝』や『パンを通じて地域の豊かな食生活に貢献する』は、今後も守り続けなければなりません。コンセプトは『一度決めた頂上を変えない』ことです。7〜8合目で経営者がコンセプトを変更すると、ついてきている従業員が混乱します。
 コンセプトとは、将来において不変的で、どれが正しいかを客観的に判断してアウトプットしなければなりません」
 同社は、30〜40代の次期店長候補が少ないため、その年齢層の育成に力を入れている。技術や製法など直接、社長が指導しているという。また、製造チーフ会議では出席者全員がオリジナルの新製品を持ち寄り、議論してより良い商品を客に提供する仕組みを採っている。
 「ビジネスも遊びも、思い切り取り組んで欲しいので、会議にも楽しさを採り入れて、ひとり一人がはっきりと意見が述べられる場を整えています」
 同社HPで壷井醇会長は次のように述べている。
 「弊社は、昭和21年の創業以来『パンを通じて地域の豊かな食生活に貢献する』ことをスローガンに日々努力を続けてきました。その間、世の中の価値観も量から質、モノから心を求める時代に大きく変化してまいりましたが、これこそが私たちが常日頃から心掛けてきた事であり、最も力を発揮できる分野です。今後も「人こそ最大の財産」という経営理念に則り、お客様の喜ばれる顔を思い描きながらパンを作りや販売をするような優秀な人材を育成することで、地域の皆様から愛される会社になれるよう最大限の努力を続けます」  パン作りのコンセプトは、子どもから高齢者まで年齢層を問わず、みんなが食べられる商品作り。自分も気を付けて、社員にも伝えていることは、職人のエゴにならないこと。
 「例えば、ドイツパンを現在の店舗に並べたとします。でも、自分が売れると思って作っても、毎日当店の売れ筋商品を買いに来られるお客様のニーズに合っていなければ売れるはずもありません。それに気付いた時、お客様のことを考えているのであれば、地域や商圏に合わせたお客様の目線で、お客様の欲しがっている商品を用意することだと思いました。それが、格好を付けたベーカリーにしないということに繋がります。お客様が欲しくもないのに、なくても良いパンを置かないということです。しかし、ドイツパンなどを作る技術もスタッフと共有していなければいけないと考えており、お客様にも理解していただきたいので、今後はそのような商品の見せ方やPRの仕方を考案したいと思います」
 ケルン店舗の売れ筋商品は、1位:チョコッペ、2位:まろやか明太朗、3位:御影メロンパン。今後は、既存で販売力がある商品の更なる販売力強化に取り組んで行くという。具体的には「ミルティフレッシュ」や新しく開発したルヴァンリキッドとポーリッシュ種を使用して軽く仕上げた「バゲット+(プラス)」、低温長時間発酵で生地を熟成さ、しっかりした甘みの「熟成バタール」。
 「バゲット+は、周辺のレストランに卸しているパンが、料理の邪魔をせず、食べ易く口どけと歯切れが良く、皿に並べても見劣りしないバゲットを作ろうと思いました。熟成バタールは、単独で食べて欲しいという思いで作りました。およそ1年前にそれぞれの製法を変更してから約3倍売れるようになりました」と開発の経緯を述べた。
 壷井豪氏は、今後の展望を次のように語った。
 「ケルンの在り方は、地域に密着して根強い企業として、足下の神戸を徹底的に盛り上げることです。小売業者と消費者、メーカーや問屋を含めて第6次産業化が注目されています。そこにしっかりと入り込んでテコ入れし、神戸の町を活性化させることです。パンを売れるようにするよりも神戸の食文化を盛り上げることにより、商売としての売上アップを狙いたいと思います。その前に、神戸にはどのようなことが向いており、何をすればみなさんにパン文化を理解してもらえるのかに役立てる企業になりたいと考えます」

【Mケルン】
〒658-0054神戸市東灘区御影中町1-8-1
電話078-841-0720、FAX078-841-0724
URL:http://www.kobe-koln.jp
1946年(昭和21年)、卸販売や学校給食パンの製造を主体に壷井豊氏が創業。1959年、つぼや製パンMとして法人設立。1976年、Mケルンに社名変更。1979年、本社ビル竣工。1986年、壷井醇氏が代表取締役に就任。1998年、ケルン店舗以外に新業態「ベッカーブルシュ」の展開を開始。2013年9月、壷井豪氏が代表取締役に、壷井醇氏が取締役会長に就任。

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