ピンクボックスベーキングカンパニー〈カリフォルニア州〉
ペイストリーシェフだった夫人が夢を実現
故郷に戻り夫婦でベーカリーを開店

BACK

 

 

ウィリスさん(左)とラスティさん

店舗外観

店舗内の様子

 ピンクボックス・ベイキングカンパニーは、2011年9月にカリフォルニア州サンタローザで開店したベーカリーだ。オーナーはペイストリーシェフのステイシー・ウィリスさんと夫のラスティさん。

 ステイシーさんは、ワイナリーなどで事務の仕事をしていたが、子どもの頃から料理やデザート作りが大好きだった。子どもが高校生になった39歳の時、子どもに手がかからなくなったので、これからは好きなことをしたいと、サンディエゴ料理学校のベイキング&ペイストリー・アートプログラムに入った。卒業後6年間は、主にレストランでペイストリーシェフとして経験を積んできた。
 「ペイストリーシェフの給料はそんなに高くないのに、ガソリン代が上がって、遠くの職場に通うのが大変になったことと、不景気の時には、レストランでペイストリーシェフが一番先に切られてしまうような気がして、不安定を持ち続けていました。長年勤めているレストランのやり方に合わせて仕事をしてきた経験を生かして、夢だった自分のベーカリーを開業して、上質な食材を使い好きなようにベイキングしたいと思うようになりました」と、ステイシーさん。
 建築会社で企業トレーナーをしていたラスティさんが解雇されたのをきっかけに、「やるなら今しかない」と、2人の生まれ故郷であるサンタローザに戻りベーカリーを始めることにした。ラスティさんは、コーヒーを淹れるバリスタの訓練を受け、カフェ経営も学び、ステイシーさんの夢を支えることになった。
 ステイシーさんの祖母もベイキングが好きで、孫達が自分の誕生日プレゼントに、おばあさんが作るジャムタルトを毎年リクエストするほどだった。その時、いつもピンクの箱に入れて贈ってくれた楽しい思い出にちなんで、店を「ピンクボックス・ベイキングカンパニー」と名づけた。昔、ケーキやドーナツは、いつもピンクボックスに入れて販売されていたので、アメリカ人にとって、ノスタルジックな意味合いもあるという。
 店舗は、主要道路から奥まったショッピングモールの一角に位置するが、2人とも地元の出身であることや家族・友人が近隣に在住しているため、開店当初から客入りは順調だった。店舗面積は約24坪で、そのうちキッチンは4.5坪。冷蔵庫ひとつ、オーブンひとつを駆使して、一日中、ステイシーさんはベイキングに精を出している。
 午前中には、シナモンロールや、クロワッサン、チョコクロワッサン、アーモンドペイスト入りのベアクロー、スコーン、キッシュ、朝食用スフレなどが並ぶ。中でもクランベリーとオレンジの皮入りと、ブルーベリー、レモンの皮入りのスコーン2種は、ほど良いホロホロ感があり、人気商品だ。レモンタルトが作られた日には、スコーンにレモンクリームのおまけが付くのも嬉しい。ふっくりとしたシナモンロールは、なめらかで軽さがある。クロワッサンも好評で、近くのB&B(ベッド&ブレックファースト)から毎週300個以上届けてほしいという卸の依頼があったが、現在の規模では無理があり、断ったという。
 「私は特にパフペイストリー作りが好きで、シーターを使わずに、1枚ずつ手で伸ばして作っているんです。夫もシナモンロールやクロワッサンが作れるようになりました。大工仕事が好きで、きっちりしているので、上手なんですよ」
 この店ならではの商品に、手作りグラノーラがある。蜂蜜を絡めたオーツ麦やナッツ、ドライフルーツなどは、市販のものとは段違いの食べ応えとおいしさだ。牛乳をかけて食べる以外に、ヨーグルトと旬の果物を重ねたヨーグルトパフェもある。
 午後には、新たに塩カラメル入りブラウニーやデイトバー(オートミールなどでデイトジャムを挟んだもの)、クッキー5種類も加わる。チョコクッキーは軟らか目で、冷めてもチョコがトロッとしている。祖母自慢のジャムタルトもタルト生地に入れるショートニングをバター混合にアレンジして、作ることがあるという。
 コーヒー豆は毎週入荷しシロップやチョコレートシロップなども手作りして、甘すぎず、風味のあるコーヒーやコーヒードリンクを提供している。ラスティさんは、いつも店頭で接客やコーヒー作りに忙しい。
 冷蔵ディスプレイには、一日中、ケーキが並んでいる。オペラケーキ、レモンタルト、キーライムタルト、チョコタルト、エクレア、チョコムースケーキ、チョコムースの7種類。一番人気は、コーヒーバタークリーム、アーモンドケーキ、ガナッシュが層になったオペラケーキで、2人で食べても満足できるぐらいのボリュームだ。エクレアもよく売れており、「コーヒーとケーキで、ゆっくりしてもらえるような店にしたい」というステイシーさんの夢が叶った。
 近隣の住人が友達や家族と定期的に、また、近くにある学校に子どもを送り迎えする親も多く立ち寄るなど、主要道路から見えないにも関わらず、知る人ぞ知るベーカリーとして、週に2千人ほどが来店する。  今後は、顧客からの要望に応え、サンドイッチなどのランチメニューを増やしていく予定だ。
 「いつか、もっと広い店舗に引っ越すことがあれば、お客様が歩いて来れるダウンタウンに近い場所で、卸業にも挑戦してみたいです」と言うステイシーさんとラスティさんは、二人三脚で第二の人生を謳歌している。
(文・写真:田原知代子)

新聞最新号へBACK

シナモンロール、クロワッサンなど

オペラケーキ