ブーランジュリー イシタ〈青森県弘前市〉
着地点を安定させる製法で
新しい食文化を開拓する商品に挑戦

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石田夫妻

店舗外観
 

店内の様子

バゲットトラディシオンなどの売れ筋商品

パンの棚

 大正14(1925)年に創業し89年の歴史を持つイシタパンは昨年3月15日、「ブーランジュリー イシタ」に改称しリニューアルオープンした。オーナーシェフの石田健郎氏と杏奈夫人は「弘前に本物でおいしいパン」を目指して力を合わせている。

 イシタパンの創業者は、東京の上野精養軒でパンを学んだ健郎氏の祖父。娘婿に継承した後、健_氏の父が3代目となった。当初は、パンと洋菓子を販売する傍らで卸しも手掛けていたが、パンに絞り込み地域の住民から親しみ続けられた。地元の高校を卒業した健_氏は親の奨めもあって上京、ドンクで7年間、パン製造の基本と販売ノウハウを身に付けた。杏奈夫人は、K・YOKOYAMAMの社長で父の横山暁之介氏からパン製造の教育を受けた。二人は、結婚を機に石田家の家業を継ぐことを決意し弘前に帰郷、4代目として「ブーランジュリー イシタ」のリニューアルオープンに至った。
 「ドンクに就職した頃は家業を継ぐ気などありませんでした。しかし、ドンクで修行を重ねるうちに、パン製造の奥深さやおもしろさが理解できるようになり、欲が出てきました」と健郎氏は語る。
 カリフォルニア・レーズン協会が主催する第20回新製品開発コンテストでは、健_氏が特別協賛部門で消費者推薦賞を、杏奈夫人(当時K・YOKOYAMAM)がインストア・リテールベーカリー製品部門で金賞をそれぞれ受賞している。
 健_氏は、店のコンセプトを次のように述べた。
 「パンをはじめフランスの伝統菓子などを弘前や青森では、あまり見かけません。そもそもパンの食文化が浸透していない地域なので、私たちが考える範囲でフランスパンの生地がおいしい、また、食パンの生地自体がおいしい製品を知って欲しいと思っています。店舗は、フランスのブーランジュリーのようにして、パリに在っても違和感がないような外観と内装にしました。二人でパリに行った時に買った、オブジェやポスター、クグロフの型などを飾って少しでもフランスの雰囲気が出るようにしています」
 また、商品について健郎氏は、「商売をしている以上、結果が伴わなければ意味がありません。旬の食材を使用し、食材の持つ本来のおいしさを引き出すことが大切だと考えます。小麦粉で例えると、カナダ産やフランス産、国内産など何処で収穫された小麦かと言うより、パンにしておいしいことを優先しています。産地よりも配合や吸水を変化させることによって、着地点を安定させています。フルーツは、地産品でおいしいものが沢山あるので、デニッシュなどで積極的に使用しています」
 売れ筋商品は、食パン(各種)や「バゲットトラディシオン(230円)」、発酵バターを折り込んだサクサクとした「クロワッサン(140円)」など、食事系のパンがよく売れるという。調理系では、ドックの「ポテトサラダパン」。菓子パン系では、自家製カスタードクリームたっぷりの「クリームパン(140円)」、フレッシュパイナップルとカスタードクリームのデニッシュでピンクペッパー添えた「アナナス(210円)」、チョコクリームとフランボワーズジャム、木苺の実をチョコチップ入りブリオッシュ生地で包んだ「ショコラフランボワーズ(200円)」、トマトベースのカレーにプチトマトとチーズを包んだフランスパン「焼きトマトチーズカレー(160円)」など。
 特に、自家製リンゴのコンポート入りフランス式アップルパイ「ショソン・オ・ポム(260円)」は、親戚のリンゴ農家で専用の紅玉の木を作ってもらい、収穫した新鮮な果実でコンポートを作っている。
 フランスパン生地を使った調理・菓子パンの種類が多く、ハード系でカテゴライズすると売上構成比の約40%にのぼるという。
 「バターロール生地の調理パンは作っていません。周辺にはフランスパン生地を使った調理・菓子パンがないので、差別化戦略と言えるのかも知れません。このようなパンを食べていただくことによって、バゲットのおいしさを認知していただけることに繋がると考えます」と健郎氏。
 クイニーアマンやガレット・デ・ロワ、ベラベッカなど、馴染みの薄い商品を提供することや価格設定で悩み、売れないことを前提に店頭に並べた結果、予想に反して売り切れるという発見もあったらしい。
 また、周辺で採れるものがおいしいせいか、客の口は全般的に肥えているという。
 「失礼ですが、食に対するこだわりは少ないのかと思っていましたが、周囲には洒落たフランス料理店やビストロがあって、グルメな人が多いように感じます。埼玉から嫁いだ私には、地域の特性なのかどうかは判断できませんが、東北にあって洋風の食文化が根付いているように思います。しかし、首都圏のように高ければ良いものが食べられるという考え方ではないので、価格構成は特に配慮が必要です」と杏奈夫人は語った。
 客層は、幅広い。イシタパン時代からの常連客に加え、ブーランジュリー イシタになってからは、今まで来店しなかった大学生や若年層が増えたという。
 「他の地方都市と同様に高齢化が進む中、若いお客様を獲得できつつあるということを嬉しく思います。弘前の若者は、学校を卒業すると東京や札幌で就職して3〜4年後にUターンするパターンが多く、活性化を実現できる可能性が残されているように思います。高齢者でも、バゲットやリュスティックを買いに来てくださることが珍しいことではなく、毎週来てくださる『クロワッサン買い占めおばあちゃん』は衝撃的です。
 少しずつですが、コンセプトに合った商品が売れるようになっていることは、有り難いことだと思います。作りたいパンは売れないと言われていますが、作りたいパンを受け入れてもらえる土地柄に感謝しています」と健_氏はいう。
 続けて、健郎氏は今後の展望を次のように述べた。
 「常に東京の動向には、目を向けておかなければいけないと思います。頻繁に行くことができませんので、ネットワークの構築やコラボレーションをしたいと思います。
 パンと食材との組み合わせや食べ方の提案、POPを活用した商品説明や訴求をしなければなりません。
 店舗展開の拡大は今のところ考えていません。自分たちの作りたいパンはまだまだいっぱいあるので、カンパーニュやドイツパン系などを増やし、売ることだけに固執せず、新しい食文化を広めるきっかけになるような商品に挑戦したいと思います」
 昨年11月には長男が誕生。仕事にも日常生活にも充実した日々を過ごし、持てる力を十二分に発揮して欲しい。

【ブーランジュリー イシタ(旧イシタパン)】 〒036-8001青森県弘前市代官町18(JR弘前駅から徒歩約10分、弘南鉄道中央弘前駅から徒歩約5分)
TEL・FAX=0172-32-3515
▽営業時間=7時30分〜18時30分
▽定休日=日曜日
▽駐車場=3〜4台
▽主な設備=ミキサー、オーブン、ホイロ、ドゥコン、フリーザーなど

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厨房内の様子

パリで買ったというクグロフの型