b. Patisserie(ビー・パティセリー)〈サンフランシスコ〉
元ペイストリーシェフがオープンしたパティセリー

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ベリンダさん(右)とキャンディスさん

店舗外観

接客の様子
 

店内の様子

ペイストリー類

 サンフランシスコ市内にある「ビー・パティセリー」は、ベリンダ・リオングさんとミッシェル・スアスさんが、1年半前にオープンした。サンフランシスコでは、駐車する場所を見つけるのが大変だが、店の前に「ご近所の迷惑になりますので、指定された駐車スペースにだけ駐車してください」という張り紙があることからも、人気のほどが伺える。店内に入ると、大きな窓から明るい光が入り、左手のカウンターにペイストリーとケーキ類が並び、2カ所のカフェスペースがある開放的な雰囲気だ。

 ベリンダさんは1999年、ミシェランガイドで星1つを獲得したサンフランシスコのレストラン「ゲイリー・ダンコ」にインターンとして入った。その後、シェフとして働いていた際、ペイストリー作りを手伝ったのが、この道に入る転機となった。
 「ペイストリーの楽しくカラフルでアートな部分に惹かれました」とベリンダさん。
 同レストランで、ペイストリーシェフになったものの、ペイストリー作りの先輩がいなかったので、実験と失敗を繰り返し独学で学んだ。1〜2週間の休みをもらい、数回他の店で弟子入りもした。自分自身のスタイルを確立して、自信を持てるようになったのは、7年たってからだという。
 9年後、働いていたレストランで知り合った、世界的に有名なレストランシェフの紹介を受けて、ヨーロッパで修行した。1年目はパリの有名ベーカリー「ピエールエルメ」。以降は、バルセロナのベーカリー、スペインやベルギーのレストランと3年弟子入り生活を送り、アメリカに帰ってきた。フランス語は話せなかったが、基本的な知識と経験があり、技術と材料も知っていたので学ぶことは多かったという。ベリンダさんは自身でベーカリーを始めたいと思い始めていたが、帰国直後では心の準備が出来ておらず、郊外のレストランでペイストリーシェフの仕事に戻った。
 ビジネスパートナーのミッシェルさんとは7年前、彼が運営している「サンフランシスコ・ベイキング・インスティチュート」で、1週間のペイストリー・コースに参加した時に出会った。ヨーロッパ修行に行く前には、修行できる店を紹介してもらえるかを尋ねたり、帰国後は、開店に際する助言を聞きに行ったりしていた。
 ビジネスプランに書くビジョンもコンセプトもはっきりしていたが、経営については自信がなかった。帰国して約1年後「パートナーが必要だ」と思い、ミッシェルさんに誰か良い人がいないか相談したところ「僕はどう?」と言われ、ほんの5分ぐらいで話がまとまったらしい。
 1カ月後、元クレープ屋の店舗物件を見つけ、2012年6月20日にパートナーになる契約と店舗リースの契約を結び、2013年2月12日に開店した。2人で別々に描いた店内の見取り図が、ほぼ同じだったことでも縁を感じたそうだ。
 ベリンダさんは開店までの間、レストランで働きながら「クーン・アマン」「ボストック」などを、サンフランシスコにある友人のレストラン内のバーに置かせてもらった。
 「私の作りたいペイストリーは、この辺りであまり馴染みがなかったので、お客様が買ってくれて、気に入ってくれるかを試してみたかったのです。ペイストリーのシェフは経験しましたが、ベーカリーは全く違う分野です。レストランではパフ・ペイストリー生地をあまり使わなかったので習得したいと思いました」
 レストランで、朝11時から夜中の1時まで働き、その後、朝7時までペイストリーを作り、2時間ほど睡眠をとり、またレストランに行くという生活を2〜3カ月間続けた。その後、友人で現在マネージャーのキャンディスさんの協力を得て、ペイストリーをサンフランシスコの人気カフェに卸すことにより、ベーカリーの開店を心待ちにしてくれるファンを作った。
 「私はクラシックフレンチスタイルの風味がとても好きなので、そこに私なりの温度や質感で遊びます。そして、クラシックな風味を3つ組み合わせて、違うスタイルに変えるようにしています。どの商品にも今までの全ての経験が生かされています」
 「クーン・アマン」は、皮がすぐにこぼれるぐらいサクサクで、中がシロップでしっとりしたペイストリー。8年前にニューヨークの有名ベーカリー「ブーション」に弟子入りした時に知った。その時、初めてパフ・ペイストリー生地の作り方を見て、自分なりに作れるようになり「ピエールエルメ」で学び直して、もっと軽く作れるようになった。プレイン、チョコレート味、季節のフルーツ味の3種類があり、今では毎日900個売れる店の看板商品に成長した。もう一つの人気商品「ボストック」は、ブリオッシュをアルミニウム缶で焼いて、パッションフルーツシロップとアーモンドクリームを載せたもの。ブリオッシュがしっとりして、ほのかな果物の甘さが絶妙だ。
 ケーキ類は、ヘーゼルナッツ・カラメル・ミルフィーユや、柚子レモンタルトなど様々だが、特に、キャンディスさんが勧めてくれた小さめのガラスコップに入った「チョコレート・コーヒートフィ」は元ペイストリーシェフならではの、皿で出すデザートのスタイルが感じられた。ガナッシュ、クリームブリュレ、チョコケーキ、コーヒークリーム、サブレクラムなどが層になっており、各々違う味と食感が楽しめる。
 たくさんの商品を作っているにも関わらず、製作スペースがカウンターの奥にあるオープンキッチンのみで、1日21時間、2シフト制でフル稼働している。
 「いつ誰が何を作るのかを効率的に考えるのが難しくて、時々圧倒されることがありますが、お客様と接することができ、すぐに反応が分かるので、ベーカリーが好きです。一心に楽しみたいと思って、店を始めました。ストレスもありますが、楽しまないとね」
 ベリンダさんがプロダクション担当、ミッシェルさんがビジネス担当、キャンディスさんがマネージャーという組み合わせにも相乗効果が出ているようだ。
「ミッシェルは週に2、3回来て全体を監督し、オーブンの故障など問題があると、すぐ対処してくれて、私とキャンディスのメンターみたいな人です。まだこのベーカリーを開店して1年半なので、将来のことは分かりませんが、いつか、チームを訓練して上海や香港などアジアの何処か、それともニューヨークに送り出し、もう1軒店を始めたいと思います」
(文・写真:田原知代子)

【b. Patisserie】
▽住所=2821 California St San Francisco, CA 94115
電話=(415)440-1700

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クーン・アマンなど

季節のフルーツタルトなど