20世紀カフェ〈サンフランシスコ〉
20世紀初頭の東ヨーロッパを想わせるレトロ感溢れるカフェ

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ミッシェル・ポルジーンさん

店舗外観

店内の様子

 サンフランシスコの中心地にある「20世紀カフェ」は2013年、コインランドリーだった22.5坪のスペースを、オーナーシェフのミッシェル・ポルジーンさんが全面改装、独特な雰囲気のカフェとして開店した。
 人気漫画家、ルーブ・ゴールドバーグ氏が住んでいたことでも有名な、20世紀初頭に建てられたビルの一角にある。
 ミッシェルさんは、料理やベイキングの仕事を経験後15年間、レストランでペイストリーシェフを続けてきた。

 東ヨーロッパのペイストリーに興味を持ち始めたのは、ハンガリー系の友人が伝統的なナッツやジャムを使った焼き菓子をくれたことがきっかけで、4年前の東ヨーロッパ旅行を起点に、夢が具体的になった。
 「正統派ベーカリーではなくブタペストやプラハ、ウィーンにあるような、ベーカリーレストランを意識した店にしたいと思いました。45歳という年齢は他のスタッフたちよりも年上だったので、自分のアイデアを実現したくなりました」
 ミッシェルさんは13歳の頃から、フィフティーズの服装が大好きで、子守をして稼いだ金で、古着屋に行って買っていたほどだった。20世紀初頭に建てられたビル内にある貸店舗を見つけた時は、運命を感じたという。ファッションの仕事をしている友人の助言を得ながら、自分の思い描く9テーブル、26席のレトロ感あるカフェをデザインした。
 「ソファの赤と、床の深緑色の組み合わせがクリスマスのようになってしまったらどうしようと心配しましたが、うまくいきました」
 許可申請などを含めて開店までに要した約1年、勤め先のレストランで、リック・ロジャース氏の「カフェハウス」のレシピを参考に、東ヨーロッパ風の菓子を作り腕を磨いた。作りたいものが決まってからは、店でコーヒーを担当している友人のトリサさんと知人のレストランでテスト販売も行った。
 ポテトクニッシュは、ニューヨークで見る大きくて重いものとは異なり、ロシアン・ストルーデルの方が近い。潰したじゃがいもと玉ねぎを、薄く伸ばして多層に重ねたパイ生地で包んでいる。小さくても、スパイスが効いて、食べ応えがある。他には、ベーグル、夏フルーツのブリオッシュタルト、チョコレート・ウォールナッツ・プラムトルテ、ポピーシードケーキ(レッドカラントプリザーブ添え)、桃・ブラックベリー・アーモンド・ストルーデルなどが陳列されている。人気商品は、ロシアンハニーケーキ。
 「初めてプラハで食べて、家で作ってみたくなりました。思い通りの製品が作れるようになった時は、記録的なおいしさだと思いました」とミッシェルさん。
 ハチミツ味のフロスティングに浸した生地が10層にもなっており、薄く切っても、ハチミツの甘さが際立つふわふわのケーキだ。時々、客に「他のスイーツもあるのよ」と言いたくなるほどだそうだ。
 開店当初は、ペイストリーやベーグルなどだけを提供していたが、客から「ランチはある?」と何度も聞かれ、ランチも始めることにした。7種類のランチの中では、ルーベン・サンドイッチが人気だ。パンもサワークラウトも自家製で、パストラミは友人が作っており、チーズはスイスチーズではなく本場で使われるレアザコンペと、こだわっている。
 オープンキッチンで、ミッシェルさんが手早く作るサラダもおいしい。キュウリ、アボカド、サンゴールド(ミニトマト)、ハンガリアンペッパー、フェタチーズ、カボチャの種、グリーンペッパーコーンなどが入っている。猪ソーセージ、焼きネクタリン、そして、マスタードビネグレットをかけたルッコラサラダのセットも興味を駆り立てる。ミッシェルさん曰く、東ヨーロッパでは、何にでもタラゴン、マスタードシード、コリアンダーを入れるそうだ。
 開店してから、大変なことも多々あった。
 「毎日、よくわからない書類を提出しなければいけなかったり、機械が壊れたりして、その度に『どうしよう!』と思っていましたが、開店して1年経って慣れてきました。
 将来の店舗像を思い描いている時は、事務的なことや人に対するマネージメントまで想像していませんでした」
 しかし、作りたかったカフェは確実に実現した。同店は、敢えてWi-Fi(無線LAN)の接続ができなくしている。インターネットカフェとは違う雰囲気を感じ取って、タイムトラベルや旅行をするような気持ちで特別な時間を過ごすために通って欲しい、くつろげる空間を作りたい、という想いがあるからだ。その想いが通じ、平日は近隣客が、週末は遠方から来てくれる客が多い。
 「最近は『エルダーベリー・ロワイアル』を提供しはじめたことに、ワクワクしています」と、ミッシェルさん。カシス・リキュールに使うカクテル「キール・ロワイアル」のエルダーベリー版で、近郊の農家から購入した旬のエルダーベリーでシロップを作り酒と混ぜる。また、ジャムに使おうとしたがペクチンが含まれていなかったので、カクテルを作ることにした。ウィーンで初めてエルダーベリーを食べて、生のままだとおいしくないが、加熱すると美しく、おいしくなることを発見したからだという。
 現在は、8時から18時までの営業時間だが「もう少し営業時間を延長して、ウィーンにあるワインバーのように、地域のワインやオープンサンドイッチなどの軽食も提供したいと思います」とミッシェルさんは今後の夢を語った。
(文・写真:田原知代子)

【20th Century Cafe】
▽住所=198 Gough St.San Francisco, CA 94102
▽電話=(415)621-2380

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エブリシング・ベーグルなど

ロシアンハニーケーキ

ルーベン・サンドイッチ