クリミナルベーキングカンパニー〈カリフォルニア州〉
プライスカードのないアットホームなベーカリーカフェ
ユニークな食材の組み合わせを堪能

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店舗外観

シナモンロールなど

店内の様子

 サンタローザの中心地にアート地区と呼ばれ、最近注目を集めている場所がある。芸術家が多く住み、店やギャラリーと住宅地が混在した独特の雰囲気が漂う。その一角に2011年11月、「アンダーカバー・ノーリッシュリー(覆面食堂)」という名のベーカリーカフェが開店した。

 オーナーのドーン・ザフトさんは、鍼師を4年間していたが長時間働くのなら、何か作る仕事がしたいと転職した。
 「15歳の時から、時々ベーカーとしてアルバイトをしていました。ベーキングの科学も芸術も化学も粉だらけになることも大好きです」
 ベーカリーカフェの名前は「アンダーカバー・ノーリッシュリー」だが、卸業やケータリングを含む会社名は「クリミナルベイキングカンパニー(犯罪パン製造会社)」。その名の由来は起業時、資金がなかったので自宅の台所を利用して趣味のように商品を作り、イベントやストリートフェアに提供していたからだという。その後、卸しの仕事を受注したので、コミュニティキッチンの一部を借りた。コミュニティキッチンにつながる同店舗は空いていたものの、賃料を考えると借りるのは無理だと思っていたが、家主さんと仲良くなり店舗賃料を段階的に上げるということで実現した。
 店内には、ミスマッチなテーブルと椅子が並び、ちょっと変わったオブジェなどが置いてある。友達の家の台所にいるようなキッチュで居心地良い空間だ。週末、満員になると、テーブルの配置を変えたりして来店客が全て入れるように工夫するという。
 「アンダーカバー・ノーリッシュリー」の看板商品は、日替わりスコーン。取材日には、チョコレートココナッツ・スコーンとハム、ズッキーニ、ペパージャックのスコーンがあった。週末には、人気のベーコンアップルチェダーチーズスコーンを必ず作る。ケーキでは、キャロットパイナップルケーキ(ココナッツクリームチーズフロスティング)が開店時から一番の人気を集めている。
 「ベーキングする時は、きっちりレシピ通りにしなければと思う人が多いですが、ベーキングの化学が解れば、質感や風味で遊べて、クリエイティブな自由があります」
 その言葉通り、ドーンさんは店の台所をテストキッチンと呼び、オーガニック小麦粉と地元の作物をできるだけ使って新しい商品を作り、敢てプライスカードは置かずスタッフが商品をお客様に説明して、会話をしてほしいと思っている。
 朝食メニューには、朝食サンドイッチやフリッタータ、キーシュ、手作りのグラノーラなどがあり、特に朝食サンドイッチが好評らしい。分厚い卵焼き、チキンアップルソーセージ、ペパージャックチーズをイングリッシュマフィンで挟み、自家製のジャズミン緑茶を浸出させたレモンカードとバジルソース入りで、甘酸っぱさがサンドイッチをうまくまとめている。
 カフェを始めてから一番難しいと思っていることはストレスへの対処だとドーンさんは言う。
 「開店1年目の売り上げは少しずつ右上がりでしたが浮き沈みがあり、今年の初めは特に大変でした。店が生き残れるかというストレスで自分自身が潰れそうになりました。しかし、少しの経験と実験で失敗しながら最善を尽くすことが私の挑戦です。この店は通りすがりの人が入ってくれるのではなく知っている人がわざわざ来てくれる場所にあるので、如何に少ない費用で最大限の効果を出すか考える必要がありました」
 ドーンさんは、店が忙しくなる週末にベーキングする以外は、新しい商品の開発に専念することにし、フェイスブックとインストグラムに定期的に商品の写真を載せてくれる女性を別に雇った。10月には特にその効果があったという。サンタローザはワインの産地でグルメを魅了する観光地。知ってもらうことによって「アンダーカバー・ノーリッシュリー」のような隠れ家的ベーカリーカフェを必要とする人たちを呼び込むことができた。
 卸業は使う労力の割に利益率が低く、大量に作れる訳でもないので減らし、企業へのサンドイッチデリバリーなどや結婚式のケータリングを増やした。
 「カフェで働くのが好きです。お客様と直接接することができて、良い友達も沢山できて、食べ物というよりコミュニティを作っている気持ちです。お客様がサポートしてくださる環境にいるので、ラッキーだと思います」
 先日、常連客のカップルの結婚式のケータリングをした。ケーキは、果物と花で飾ったシンプルなものでクリエイティブでいることに焦点を当て、他の店にはない風味の組み合わせで手作りした。フルーツサラダはバイキング形式で、メイプルシロップと海塩で味付けしたピーカン、砂糖漬けウォールナッツ、レモンカード、ホイップクリーム、レモン、サフランなどをトッピングできるようにしたのが好評だったと言う。
 ドーンさんはパイ作りでも有名だ。パイ生地をパイ皿に押し付けていくのが特徴で、ショートブレッド、ナッツ、オートミール、キヌアなど様々なもので作る。
 「押し付けていく手触りが好きで、手早くできます。砂糖漬けベーコンのパイ皮でバターナットチーズケーキを作ったこともあります。砂糖漬けピーカンのトッピングは、すばらしい風味の組み合わせでした」
 昨年11月の感謝祭には、一昨年より受注するパイの数を増やした。普段は、ガラス製パイ皿で焼いたパイを渡し、返してもらうが、ホリデーの時期は数が足らないので、パイ皿を持参してもらうことにした。パイは、海塩入りガナッシュを底に敷いたパンプキンパイや、生姜ピーカンパイなど14種類から選べる。
 こうして、デリバリー、ケータリング、特別注文が軌道に乗り、カフェも月曜日を定休にしていたが現在は無休にするほど忙しくなり、近い将来、週に1〜2回気軽な夕食を提供していく予定だという。
(文・写真:田原知代子)

【Criminal baking co.】
住所:463 Sebastopol Ave.Santa Rosa, CA 95404
電話:(707) 992-5661

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ドーン・ザフトさん

キーシュ

朝食サンドイッチ