バートーンズ・ベーカリー〈カリフォルニア州〉
ニュージーランドにあるミートパイがないことに驚き
第2の人生でアメリカンドリームに王手

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店舗外観

バートンズ・ベーカリーの皆さん

店内の様子

 2015年12月1日、ニュージーランド出身のウォーレン・バートンさんとカリフォルニア出身の夫人ボビーさんは、ウィンザー市でニュージーランドのパイやスイーツとアーティサンブレッドのベーカリーを開店した。

 「20歳の時、初めてアメリカに来て、ニュージーランドではどこにでもあるミートパイがないことに驚きました。ボビーと出会い、ニュージーランドに帰った時、アメリカにはないおいしいパイやスイーツを食べさせて、いつか妻の故郷に帰って、ベーカリーを開業したいという夢を語り、二人ともベーカリーで働き出しました」とウォーレンさん。
 ニュージーランドの知り合いのベーカリーで、ウォーレンさんはパン作りを、ボビーさんはスイーツの仕上げやレジ打ち、接客を経験して、ウォーレンさんの夢は二人共通の夢になった。その後、ウォーレンさんはワインのブドウ栽培家として働き、2001年にはニュージーランドからアメリカに移り住んだが、40歳になったら仕事を辞めてベーカリーを開業する、という夢は持ち続けていた。
 ついに決心して、会社を辞め、サンフランシスコ・ベイキング・インスティチュートという専門学校で6カ月間、プロのアーティサンブレッド作りとペイストリー作りを学び、店舗の場所も決めた。しかし、準備には1年半を要した。
 「地主が貸せる店舗の場所を途中で変えたり、店舗の設計から床のフローリングまで全てに時間がかかってしまい、今振り返ると、人生で一番大変な時期でした。予定より長く、無給の状態が続いたので、予算が足りなくなってしまい、友人も巻き込み『キックスターター』で、ベーカリーの要となるデッキオーブン購入資金の寄付を募ることにしました」
 「キックスターター」とは、2009年に始まった一般人がクリエイターのプロジェクトに寄付するオンライン・システム。目標到達金額を掲げ、到達すれば5%の手数料を引いた全額を受け取ることができ、達しなければ一銭も受け取れない。今まで82000件以上のプロジェクトが生まれ830万人が16億ドル寄付したという。
 バートーンズ・ベーカリーの場合、326人から、5〜1000ドルの寄付を受け、目標を上回る39654ドル(約475万円)を集めることができ、無事開店に漕ぎつけた。寄付者は金額に見合ったパイやスイーツ、オリジナルエプロン、コーヒーマグの他、貢献者として店のブレッドボードへの名前入れやカップケーキ作りパーティなどの見返りが得られる。ウォーレンさんとボビーさんは、寄付による資金を得ただけでなく、開店前からコミュニティのサポートを得ることができた。
 ベーカリーは、ウォーレンさんが42歳の誕生日の2週間前に開店した。40歳で起業という夢をたった2年間の誤差で実現させた。開店してみると、初日から予想をはるかに上回る400〜500人の来店客で賑わったと、ボビーさんは言う。
 「最初の6日間、夫は毎日19時間、私は10歳の子どもの世話をしながら12〜15時間働きました。開店後数週間は、商品が売り切れて、早めに店仕舞いしなければいけない日もありました。私達はコミュニティの期待を、甚だしく過小評価していました。私達と4人の従業員で店をまわせると思っていましたが、あれだけ忙しくなることが分かっていれば、始めからもっと人を雇って、もっと売り上げが上げられるようにしました。それに、もっと広い店を借りたと思います」
 バートーンズ・ベーカリーの人気の秘密は、ニュージーランドのベーカリーには必ずあるが、アメリカのベーカリーにはない商品。スイートブレッドにフレッシュクリームを挟んだ「ニュージーランドドーナツ」、ラズベリーまたはチョコレートに浸したスポンジにココナツをまぶして、フレッシュクリームを挟んだ「ラミントン」。カスタードを挟んだペイストリーの上にアイシングしてココナツを振りかけた「カスタードスクエア」など、どれも軽い口当たりが特徴。アメリカ人にとっては、珍しさも手伝ったようだ。
 惣菜系のパイは、ミンス&チーズ、ステーキ&チーズ、ステーキ&チーズ&マッシュポテト、クリーミーチキン、ベーコン&卵、マッシュルーム&ゴートチーズなど。肉系はどれもボリュームたっぷりで、特にステーキ&チーズ&マッシュポテトの組み合わせは、これにサラダがあれば、立派な食事になる。フィージー、 オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イギリス、アイルランド出身の人達にとっては、ミンス&チーズパイ、ステーキ&チーズパイなどが恋しいおふくろの味で「アメリカで食べれるなんて」と感謝されているそうだ。
 取材当日には、70歳ぐらいの客が、牛肉ミンチ&チーズ、ステーキ&チーズ、ソフトドーナツを、アメリカに50年住んでいる91歳のニュージーランド出身の友達のために、遠くから買いに来られていた。  「もちろん、アメリカ人の好きなチョコクッキー、チキンポットパイなどもあります。ニュージーランドのパイやスイーツを紹介したくて店を始めましたが、ウィンザー市にはベーカリーが一つもないので、アーティサンブレッドも必要だと思って、作ることにしました。二つ柱があれば、一つがうまくいかなくても、もう一本が支えてくれるので」とボビーさん。
 カラマラオリーブ・アシアゴチーズブレッドやバゲットが人気。近郊に3千人も住んでいるフィージー出身者のために、柔らかく小さなフレンチブレッドとローフもある。
 この2本柱効果で、開店4カ月目の4月時点で、既に年度末までの売上予測額の3倍に達したそうだ。ペイストリーシェフのアンドレアさんも迎え入れ、現在はパートタイムを含めた13人で店舗を運営している。  今後は、ウィンザー市のファーマーズマーケットに出店し、隣の市にある友人のガソリンスタンドでもパイを販売する予定だ。
 「電気技師や建築業者などお腹のすいた男性が多く立ち寄る忙しいガソリンスタンドです。湿度を管理できるパイウォーマーを置いて、毎日2回、新鮮なパイを配達します」とウォーレンさん。彼のアメリカンドリームは始まったばかりだ。(文・写真:田原知代子)

【BurtoNZ Bakery】
▽住所=9076 Brooks Rd S Windsor, CA 95492
電話=(707)687-5455

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ソーセージロールなど

チョコレート・ラミントンなど

ダークサワー種ライ麦ブレッドなど