ベッカライ・グリュック《熊本市南区》
地域に親しまれ会話できる接客に力点
パン好きを育てる「パン教室」催行を

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川野智子氏

店舗外観
 

店舗入口

駐車場と広大な更地
 

店舗内の様子

メロンパン

れんこんカンパーニュ

 鹿児島へ伸びる国道3号線沿いを熊本市内から南に車で約15分走ると、右手にJR九州の熊本総合車両所の大きな建物が見えてくる。その南端の左側に昨年11月14日にオープンした「ベッカライ・グリュック」がある。子ども連れの若い母親や散歩の途中に立ち寄る年配者、車で活動する営業マンなど幅広い層の顧客に親しまれ、早くも地域になくてはならないベーカリーの地位を築いている。

 代表の川野智子氏は、熊本県出身の27歳。東京の日本菓子専門学校を卒業後、埼玉県川口市に拠点を置く「デイジイ」に入社。6年間でパン作りの基本を学び、3店舗で販売を経験した。西川口店では店長を任されるほどの人物であった。
 ドイツパンが好きで、自分のイメージするドイツパンを故郷の人々に食べてもらいたいという強い想いから、昨年3月にデイジイを退社し、熊本に戻って開店の準備を始めたという。
 川野氏は、開店までの経緯を次のように述べた。
 「20年ほど前まで親戚がこの場所でドライブインを営んでいました。建物は当時のままにしてあったので、鉄骨のみを利用して大掛かりなリフォームを行い店舗にしました。駐車場部分は舗装しいてますが、奥の更地もこの店のもので、あまりの広さにどうすれば良いのか分かりません。今のところ何かが建つという計画もありません。時々、土地の件で問合せがあったり、来店される人がおり『オーナーです』と私が応対すると、さらに驚かれます。
 熊本市が政令都市になってから建設許可のハードルが高くなり、新築申請許可の取得が難しくなりました。ドライブイン兼住居という申請が生きていて、比較的問題が少なくベーカリー店舗にすることができました。  熊本に戻ってからオープンするまでの期間が短かったので、毎日奔走しました。パンの試作を焼き始めたのはオープン1週間前でした」
 11月にオープンしたが、計画では8月だった。夏場の客が少ない時期に開業して、秋に向けて徐々に売上を伸ばそうと考えていた。しかし、予想していない出来事が起こるなどで遅れ、暦を睨みながらオープンの日を決めたという。
 店名の由来は、幸せを意味するドイツ語「グリュック」。土地や建物などほとんど親や親戚に支えてもらったことから、自分自身がこの上ない幸せ者だという思いと感謝の気持ちが込められている。
 店のコンセプトは、地域密着だという。
 「地域の方々に親しんでいただきたいと思っており、お客様と会話をするという接客に最も力を入れています。パンに関しては、ドイツパンに傾注したいと思っていますが、お子さまや年配の方も多いので、やわらかいパンから硬く珍しいパンまで幅広い商品構成に心掛けています。弊店のパンを買われるのはお客様なので『これしかやらない』や『このパンはこうでなければ』ではなく、柔軟に考えています。
 食べるものを『残す』や『廃棄する』は、もったいないことでECOの観点に反することは理解していますが、最後のお客様にも焼き立てを提供するというデイジイの精神が身に染みていますので力の限り作り、販売したいと思っています」
 ドイツパンに魅了された理由は、最初に食べたライ麦パンにあるという。第一印象は「おいしくない」「食べられない」だったらしい。しかし、ライ麦パンを作ったり食べたりしているうちに興味を持つようになり、おいしく感じるようになったという。
 製法のこだわりは、講習会で習ったルヴァン種を大切に種継ぎして使用していること。「自信がないので『こだわっています』とは言えませんが、試行錯誤しながらおいしいパンを作ろうとしています。自分の店を持って、見えるものが変わりました。店長時代は先輩たちからかわいがってもらって少し調子に乗っていたようなところがありましたが、今は少しでもおいしいパンを作ろうとか、少しでもお客様に喜ばれようという気持ちでいっぱいです」と川野氏。
 商品構成は、ドイツパンを含むハード系が約40%、菓子パン系が約40%、サンドイッチや焼き菓子等で約20%。売上では、ハード系と菓子パン系で半々。
 売れ筋商品で一番人気は、焦がしバター風味の「メロンパン」。二番は生地にみりん・醤油・酒で甘辛く炊いた富合町名産のれんこんをダイス状に切って練り込んだ「れんこんカンパーニュ」。三番目はキャラクターパン。「ととろ」と「くま」が店頭に並んでおり、言うまでもなく子どもには絶大な人気がある。新商品の「とうもろこしのリュスティック」もよく売れている。
 「子どもが大好きで、来店されるとクッキーをあげます。それを目当てに来るお子さんもいるくらいです」取材当日も幼児が保育士に連れられて、店舗の外、晴天の陽ざしの中で「お買い物ごっこ」を楽しんでいた。  売れる時間帯は、朝一番の朝食用と夕方(15〜16時)。夕方の客は、幼稚園に子どもを迎えに行った帰りという感じが多いようだ。「午前中、スーツを着た男性が多い理由が分かりませんでした。暫くして、八代方面に営業に行かれる人だと言うことに気付きました。男性客は、気に入った同じ商品を毎日買って行かれます。長い休日があると、初日と最終日には多くのお客様が来店してくださるのですが、中日は若干少ないという傾向があります。昨年は、オープンしていなかったので分かりませんが、シルバーウィークも同じ傾向でした」
 パンの価格について、客からは安いと言われるらしいが、川野氏自身は適正価格だという。小麦粉や輸入原材料が高騰する中、価値に合った価格設定をしなければ、店が存続できなくなり、客に喜ばれることもないという。価格は今後も適正価格を守り続けるという見解であった。
 今後、力を入れたいことと展望について川野氏は次のように語った。
 「パン作りは、自分自身で未熟だと感じているので、質の向上を追究したいと思います。併行して、どこにも負けない味と種類を店頭に並べることを目標にしています。
 イートインスペースもあって、屋外にもカフェにできる余裕があるので、メニューの充実を図ります。  小さいお子さまの来店も多いので、将来のパン好きを育てる意味でも、親子で参加できる『親子パン体験教室』の催行を狙っています。やりたいことが多いですが、一つずつ確実にクリアしたいと考えます」

【ベッカライ・グリュック】
〒861-4156熊本市南区富合町田尻305-1
電話096-357-7001
▽最寄り駅=鹿児島本線富合駅から徒歩約12分
▽営業時間=8〜18時
▽定休日=火曜と第2・4月曜
▽従業員数=6人
▽客単価=850円
▽主な設備=ミキサー、オーブン、ホイロ、フリーザー等

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キャラクターパン

とうもろこしのリュスティック

プレッツェルなど