うちだパン〈愛媛県松山市〉
コンセプトはベーカリーのディズニーランド
人材育成で郊外の2店舗目も視野に

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内田敏之氏
 

店舗入口付近

店舗正面

店舗内の様子
 

黒糖ロールパン

クレセント

カレーパン

 P内田パンは1949年、松山の繁華街二番町で創業し、5年前にJR松山駅から北に約1.5kmの市街地に移転した。創業地とは場所が変わったが、同店の代名詞「黒糖パン」は変わらない味で、子どもから大人まで、安心して食べられる数多くのパンを提供し続けている。

 二代目社長の内田敏之氏は、移転に至る経緯を次のように話した。
 二番町時代は、店売りが難しい立地でしたので、外販をメインに移動販売やWebでの通販等を行っていました。移転後は、リテイルベーカリーとして店売りをメインにする業態にしました。今までとは、立地・売れ筋商品が全く異なるので、約90%の商品を変えました。
 PANメンバーズで知り合った方に、リテイルベーカリー化の計画を話すと、店舗設計や商品など様々なノウハウを松山まで足を運んでいただき伝授してもらいました。その方との出会いがなければ、計画倒れになっていたかも知れません。
 現在の商品アイテムは、100を超えるという。生産性を考え、できる限り絞り込んでいるらしいが、客の喜ぶ顔を思い浮かべると自然にバリエーションが増えてしまう。小物パン数種類をセットにした商品もあるという。
 内田氏は大学在学中、日本製粉の紹介で神戸市の洋菓子店「ホワイトローズ」で働き始め、卒業後も同店で勤務。約4年間で洋菓子とパンの修行をした。その後、日本パン技術研究所に入所し製パン技術教育コースを修了して松山に戻った。
 店舗のコンセプトは、ベーカリーのディズニーランド。来て楽しく、また行きたくなる。いつも感動があって様々なイベントがある。
 「当店は、イートインスペースがありませんので、ほとんどのお客様は4〜5分でお帰りになります。その短い時間でも癒やしがあり、ホッとする空間を作りたいと思っています。
 また、どんな人にでも受け入れてもらえるパンがうちだパンの商品です。『今日はどんなパンを食べよう』 と選べる楽しさを実感してくださることが喜びです」と内田氏。
 地域に密着し、商圏3〜5kmの顧客を固定化するため、また、将来に繋がるファンを作るために、近隣2小学校の児童を対象にした俳句大会や幼児の塗り絵大会を実施している。商圏外の旧北条市(松山市に編入)、今治市の客も結構多い。
 「以前からポイントカードを発行していますが、半年ほど前から住所等を記入してもらうようにしました。それを見て、意外に遠方から来てくださるお客様が多いことに気付きました。ポイントが貯まったら半額セールの特典も付けています」
 製法について同社では、おいしいパンは生地の発酵にあると考えている。毎日コンディションが違い、天候にも左右される。生地は生き物なので、機嫌を伺いながら低温でじっくり熟成させている。低温熟成発酵させることで、日本人好みのふっくらやわらかい生地と焼き上げ時の風味が付与される。
 「敏感なお客様は、微妙な味の変化を感じ取られます。その点を販売・製造のスタッフ全員が心がけて常に喜んでもらえるパンの提供を目指しています。『いつ来ても変わらない味・安定したおいしさ・安心できる食材』がお約束できるよう努力しています。また、できたてのパンを多くのお客様に味わっていただけるよう小分け焼成しています。朝でも夕方でも、常に焼き立てパンを提供できるように時間を調整しています」
 このような取り組みから同店は移転後5年間、連続して微増ながらも堅実に右肩上がりの営業成績を示している。
 売れ筋商品のベスト5は次のとおり。1位クレセント(ソフトフランスに溶かしバターを織り込んだ)、2位塩パン、3位黒糖パン(ロシアで身に付けた技術を同社で開花させた)、4位カレーパン(牛肉たっぷり)、5位塩ミルク(塩パンにミルク風味のクリームを挟んだ)。
 内田氏はクレセントについて「セールをすると1000個、通常の土・日で400〜500個が売れます。新しく開発されたパンではないので、どれだけ商品に磨きを掛けるかと、売り方を工夫するかがポイントになります」と述べた。
 商品構成は、菓子パン13%、調理パン9%、食事パン系(フランスパン等のハード系含む)30%、食パン8%、サンドイッチ13%、ドーナツ8%、ミニパン15%、その他パン・焼き菓子・ドリンク類約5%。
 パンの価格を「他店に比べて全体的に安いと思います。クレセントの70円は特に安いと思います。3個買っていただくとさらに安く180円にしています。しかし、客単価は上がります。食事パン系は比較的安くして販売構成比率が上がると、原材料比率が下がることによって利益が増えます。今後もこの基本線に沿って拡大を図ろうと考えています」
 セット売りやまとめ買い値引きが印象的であった。パンセットは、人気ものセット、プチドーナツセット、塩パンセット、特選パンセットと豊富で、それぞれにパンの構成も価格も違う。まとめ買い値引きは、個数によって値引率が変動し多く買う方がより安くなる。
 内田氏は、今後の展望を次のように語った。
 10年計画で、地域の一番店を目指しています。そして、人材育成です。今年1名入社し、来年2名が入社する予定です。この人たちが育ってくれることにより、2店舗目という次の展開が考えられるようになります。2店舗目は、松山市内の郊外で広い駐車スペースがある店舗です。
 現在でも新製品はあまり出していません。新製品よりも既存商品を磨くことに重きを置いています。また、季節商品を早く出して、先取りすることを心掛けています。アイテムは、さらに絞り込んで焼き立て、作り立ての回数が増やせないか模索中です。昨年に比べ今年は、平日の売上が伸びつつあります。さらに安定化させて、全体の売上を底上げできるようしたいと考えます。

【うちだパン】
〒791-8015愛媛県松山市中央1-12-1
電話89-989-7262
▽営業時間=7〜19時30分
▽定休日=木曜日
▽従業員数=正社員:9名、パート・アルバイト約20名
《黒糖パン(ロール・食パン・食パンロング・山食)》
 誕生は創業前。戦時中、創業者はロシアで抑留されていた。抑留時期にロシア人の食べるためのパンを作らされていたという。創業者はパンなど作ったことがなかったが、毎日パンを作らされていた。毎日パンを作っていることでおいしいパンの焼き方が身についた。数年後、終戦で日本に戻ってきた創業者は、身についた技術を内田パンの黒糖パンとして開花させた。
 その黒糖パンが今まで伝わっている。まさに同社の代名詞といえるパン。

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