山梨パン工房 モンマーロ〈山梨県甲州市〉
粉から仕込む製造工程を強調
県全の商圏化と観光客が求めるご当地パンを

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陰山和麿氏

店舗外観

店内の様子。左上のモニターで仕込みを紹介
 

山梨だからぶどうぱん

こだわりクリームパン

クロワッサンサンド

 「山梨パン工房モンマーロ」は2015年1月23日、東山梨駅前から一駅東京に近い塩山駅より車で約10分(甲州市塩山下於曽1567)の場所に移転、リニューアルオープンした。オーナーシェフの陰山和麿氏は、菓子業で学んだ製造・販売・店舗設計、スイスでの勉強、前店舗で培ったノウハウを活かし、県外の観光客から注目されるベーカリーを目指している。

 陰山氏は「合わせた訳ではありませんが、11年の前店舗と同じオープン日でした。工期が遅れ、セブンイレブンと不二家との合同オープンでしたので、私の都合で決めることはできません。店舗の敷地は60坪です。共用の土地は使用料を支払い、建物は自己資金で建てましたが、所有は不動産会社のもの。建築費は建設協力金という名目で賃貸料から相殺されるという仕組みです。最近は外食産業等でこの方式が一般的になっているようです。建物の所有も選択肢としてありましたが、相場と比較しても問題はなく、固定資産税や将来の評価額を想定すると所有しない方が賢明だと判断しました」と店舗の所有権に関わる経緯を語った。
 山梨県の人口は約85万人。総人口が減る中、65歳以上が全人口の4割近くを占めている。県土の約7割が森林で、残された約3割に人々が暮らしている。甲州市に至っては、人口減・高齢化が進む最先端だという。
 例え一駅とはいうものの厳しい立地に移転した理由を次のように明かした。
 「先ず、店舗を大型化することで集客に繋がることです。アクセスが重要視されるため、車での入り易さや行き易さに軸足を置きました。地方都市や首都圏の郊外では、大手外食チェーン店がなければ食事ができないと言っても過言ではありません。店舗の共通点は、良い場所に広い駐車場があって、ゆったりとした店内だということです。こうして個人店を淘汰し、日本を制覇しようとしている外食チェーン店舗を考えると「空間が客を呼ぶ」という予測が成り立ちました。もし、本物のパンを売るベーカリーに外食チェーン店の共通点項目があるならば、間違いなくお客様は来てくれると思いました。
 移転構想は以前から持ち続けていました。しかし、想いを抱いていても諸条件が揃わなければ実現は不可能です。今回の移転は、全て満足できる条件が揃ったということです。また今後、従業員が定着する会社作りをするためには、店舗の見栄えも大切です。新店舗のような建物と周りの環境が整備されている方が人材も集まり、定着率も向上すると思いました。このことは、お客様にも共通すると思います。
 前の店舗から2.5kmしか離れていないので、ほとんどの顧客を持ってくることができると考えていましたが、思い違いでした。新店オープン後、半分が来店されているか否かで、客層が替わりました。売上は150%に伸長していますので、違ったお客様を獲得できたことになります。商圏の人口を比較すると新店舗の方が3千人少なく、車での行き易さが的中し商圏外からの来店が特筆できます」
 敷地内には、同店とセブンイレブン甲州塩山下於曽店、不二家フィーストタウン塩山店が並んでおり、フィットネスのカーブス、au・docomoショップ、マクドナルド塩山店。周りには、いちやまマート(山梨県全域に展開するスーパーマーケット)、バーミヤンなどがある。
 「セブンイレブンが出店すると聞き、立地は間違いないと確信しました。一部の商品は重複していますが、当店のパンとは別物だとお客様が認識されているようです。仮に前店舗のような立地で、近隣にCVSができると便利な方で購入されてしまうので脅威に感じたでしょうが、隣同士であれば棲み分けは明確になります。コーヒーの無料化は廃止し、有機
栽培の豆を使用したコーヒーに変更して有料(70円)にしました」と陰山氏はCVSとの相乗効果を述べた。  パンの販売価格は、前店舗で移転前半年間に思い切って上げたという。移転と同時に値上げすると前店舗の客を無くし、新しい場所では高いという印象が付いてしまうため。安く多く売ろうとすると厨房も販売員も負担が大きいにも関わらず、収支決算書では人件費が上がり、予定の利益率に達することはない。全員が精一杯働き達成感があるのに利益が伴わないという状況を味わったため、薄利多売は極力避けているという。
 「10年間頑張ってブランド化し県内に認知されてきたので、これからはより価値のある(値段)商品の開発や方法を考えようと思います。販売価格を上げることによって、以前に比べ厨房も販売も大変楽になりました。設備も自動化機器の導入で、同じ売上でも製造職の疲労度が全く違います。販売員の顔色も全く違います。何より原価率が低くなりました。平日の来店客は飛び抜けている訳ではありませんが、土・日・祝は大型店の本領を発揮して集客できています」と陰山氏。
 移転のコンセプトは、今後の人口減・高齢化を考え観光客の誘致を視野に入れたこと。地元の人口を考えると本来、甲府方面が望ましいが、距離的に前店舗と同じ社員やパート・アルバイトが雇えなくなる。また、甲州市は観光客が望めるため人口減を承知で近場を選び挑戦することにした。
 観光の客を得るため、これまでも様々なラスクを製造し高速道路のサービスエリアや道の駅で販売してきた。現在は、観光バス会社とタイアップし朝食を納めているという。将来は平日に店舗前の駐車場に観光バスを入れるという拡大方法を模索している。甲州市は、グルメ観光地として名高く、勝沼のぶどう・桃・ワイナリーのほか温泉もある。
 売れ筋商品は次の通り。
▽石窯塩パン(プレッツェル型)=人気No.1の商品。平日でも400個以上を売るという。フランス産天然塩と贅沢なバターの風味が魅力。
▽こだわりクリームパン=新鮮卵黄とフレッシュバター、バニラビーンズを使用。高温短時間で風味の良いなめらかなカスタードに仕上げた。
▽モンマーロ食パン=石川県日本海のにがり、山梨県・秋田県などの米麹を使用した人気No.1の食事パン。保存料、防腐剤、乳化剤不使用。やさしい味わいと食感、キメが細かくしっとりとした生地が楽しめる。
▽山梨だからぶどうぱん=マスカットベリAを搾った防腐剤などを一切使用しないジュース100%で作った。他にはない味わいのぶどうパン。
▽石窯自家製酵母バゲット=フランス産小麦と自家製酵母で作った本格的なフランスパン。ほんのり酸味のきいたモチモチのクラム、味わいのあるパリパリのクラスト。
 売場には、厨房の作業風景をコマ送りで紹介する大型のモニターが設置されている。リテイルベーカリーの強みは、粉から生地を仕込み、手作業でパンを作ること。成型や焼成を見せている店舗は多いが、最大の特長「仕込み」を見せているところがない。これは、CVS・スーマーケットで真似ができない。
 厨房内にて、ぶどうを出荷するために使用している農協のダンボール箱に同店のロゴを印刷してばんじゅうとして使用している。プラスティック製は管理に手間が掛かるが、破れたり汚れてもダンボール箱なら捨てられコスト・衛生面で有効。客の大量買いにも対応でき「持ち易い」と好評。
 生地の作業台は、全て御影石製。木やプラスティックは剥離の可能性があり、異物混入に繋がる。生地温度が下がるのではと懸念したが、特に問題はないという。
 石窯は、キュウーハン製ガスオーブン。「お客様に対するPRが不十分なので、今後は更に石窯を強調する製品を前面に出したい」としている。
 陰山氏は、今後の展望を次のように語った。
 通常の商圏のみならず山梨県全域を商圏にしたいと考えています。ベーカリーは沢山ありますが、お客様が好む商品を多く持って商売をしているベーカリーは限られています。県内には85万人のお客様が存在すると想定し、それらのお客様が好むパンを開発し販売したいと思います。並行して、県外の観光客に求められるご当地パンを作り認知してもらうことです。このことは、モンマーロだけではなく山梨県が取り組むキーワードにもなっています。

【山梨パン工房モンマーロ】
山梨県甲州市塩山下於曽1567(JR中央本線塩山駅より車で10分)、電話0553-20-6338
▽営業時間=8〜18時30分(11〜4月は18時まで)
▽定休日=月曜日
▽従業員数=正社員:8名、準社員:2名、パート・アルバイト:35名
▽日商=平日:45〜50万円、土・日・祝:65〜70万円
▽客単価=約1,000〜1,100円
▽駐車場=60台(他店舗共同)

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