レッドバード・ベーカリー〈カリフォルニア州〉
理想のパン・ペイストリー作りに没頭
目標はコミュニティベーカリー

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アイザックさん(左)とリンダさん

店舗外観

店内の様子

 昨年4月、サンフランシスコ郊外にあるワインの産地、サンタローザに「レッドバード・ベーカリー」が開店した。工場や倉庫が並ぶ地域にあり、道脇の看板を探して行く、隠れ家的なベーカリー。オーナーのアイザック・サーマックさんとリンダさん夫妻は有名店「デラ・ファットリア」で働いていたが、アイザックさんの父親が他界したことをきっかけに独立した。

 「アイザックと父親の夢はベーカリーを始めることだったので、父の没後、敬意を表して、その夢を実現することにしました。立地条件はあまり良くありませんでしたが、キッチン付きで一番安い物件だったので、持ち家を売って、この店に全てを投資しました」とリンダさん。
 卸し専門のパン工場だった建物を改装したので、井戸水用の濾過作用浄水システムや老朽化した設備に意外な時間を費やすなど、開店に漕ぎつけるまで苦労したという。
 就学前を含んで4人の子どもがいる中、勇気の要る決断だったが、理想である素朴なパンやペイストリーを思い通りに作れるようになったことが嬉しいと、二人とも口を揃えて言う。店の名前とロゴは、アイザックさんの苗字「サーマック(赤い鳥)」に由来している。曾祖父の代から、自分の敷地への道を「レッドバード・レイン」と名付けるなど、一族の所有物に「レッドバード」を使っており、アイザックさんの代は「レッドバード・ベーカリー」となった。
 高校卒業後より、パン作り一筋に生きてきたアイザックさんのパンは、全粒粉と自家製のサワー種を使用。甘めの優しい味で、酸味は後味で感じるぐらいなので、サワー種のパンに慣れていない人でも食べやすい。毎朝、一番人気のルヴァンを含む4種類のパンと、全粒粉チャイブレッドまたは全粒ライ麦パンを焼き、週末には、チャバタなど他のパンも焼く。
 「パン作りの全ての工程を楽しんでいますが、発酵時間や水の量を変えたり、新しい小麦粉を試したり、工夫することが好きです。良いパンを作るために必要な時間がとれて、やり甲斐があります。自分の店を始めて、一番大変なのは、パン作り自体ではなく、毎日14時間ほど働いているので、家族との時間が少なくなったことです」とアイザックさんは言う。
 リンダさんは、料理学校に在学中、ベーカリーでパートの仕事をした際に、ベーキングが好きになった。卒業後、料理人を数年経験した後、ペイストリーやデコレーションケーキを作るようになった。
 惣菜スコーンはバターミルクとバルサミック酢で味付けしたカラメル状の紫玉ねぎ入りで、外側はカリッとして中はビスケットのような食感。惣菜パンでは、イタリアンソーセージ・マッシュルーム・リーク&チーズ・クロワッサンがよく売れている。旬の野菜を使った惣菜パンは、バターナットスクワッシュ・ほうれん草・ゴートチーズ・ジャックチーズ・クロワッサン。組み合わせや調理方法を工夫し、それぞれの食材の味を際立たせているのは、リンダさんの経験が生かされている。
 「料理とベーキング両方の経験を合わせたいと思っています。ファーマーズマーケットの旬の野菜や果物を見てオーガニックをできるだけ使い、家族のために作るような素朴さに、切れ味の良さを加えるようにしています」
 アメリカのチョコクロワッサンは、チョコチップか板チョコの棒が入っていることが多いが、同店ではチョコレートガナッシュ入りで、口の中でとろける。クロワッサンには発酵バターを使用し、風味と深さを出している。人気のピーナッツバタークッキーサンドは、なんと直径約12cm。サクッとしたピーナッツバタークッキーはリンダさんの指の型付きで、トロッとしたピーナッツバタークリームとの組み合わせが絶妙。「長年この大きさで作り続けてきました。二人で分け合うのを楽しみにしておられるお客様方もいらっしゃいます」とリンダさん。そのほか、ウェディングケーキなどの注文も受けている。
 新しい店の宣伝を兼ねて、開店時から夏にかけて週8回、近隣のファーマーズマーケットで、パンやペイストリーを売っていたとリンダさんは言う。「ファーマーズマーケットにブースを出して、私達の商品と店のことを知ってもらえるようになりました。朝のマーケットでは、パンとペイストリーがたくさん売れ、夜のマーケットでは、フラットブレッドや惣菜ガレット、小さなケーキやクッキーなども出しています」
 現在、ファーマーズマーケットと卸業の売上がほぼ同率で、リテイル販売の割合が一番低いが、店に冷蔵ショーケースを入れ、サラダ、フルーツジュース、チーズ盛り合わせ、注文以外のケーキなどの販売を始めたばかりだ。スープの販売も始め、エスプレッソマシーンを購入し、2月には、外にテーブルを、窓際には長いバーテーブルとスツールを置いて、店でも食べられるようにする。
 「新しいオーブンを購入して、パンをもっと焼けるようになったので、先週からパンの卸し先を増やすため、店やレストランに電話をかけ始め、3軒目のレストランの卸し先を見つけたところです。ベーカーが二人いるので、ペイストリー作りを任せて、私はペイストリーのレシピを考え、品質の維持を続け、もっとパンの卸しのマーケティングに力を入れる予定です」とリンダさん。
 目標はパン、ケーキ、コーヒー、朝食、昼食、テイクアウトなどを全て提供できるコミュニティベーカリーになることだそうだ。
 今の勢いと二人の意気込みを見ていると「賃貸契約が切れる2年後に、より良い場所に店を移したい」という二人の夢は、確実に叶いそうだ。
(文・写真:田原知代子)

【レッドバード・ベーカリー】
▽住所=3279 Dutton Avenue Santa Rosa,CA 95407
電話=(707) 521-9838

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