パスカリン・パティセリー&カフェ
〈カリフォルニア州〉
看板商品はシンプルな「クーン・アマン」
フランス出身のシェフ2人が様々なメニューに挑戦

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ディデアさん(右)とセリンさん

店舗外観

店内の様子

 2015年6月、サンフランシスコ郊外のセバストポル市に「パスカリン・パティセリー&カフェ」が開店した。オーナーは、フランスとアメリカのミッシェラン星を獲得したレストランやホテルで活躍していたシェフのディデア・パスカル・アジョージさんと、ペイストリーシェフのセリン・プラノさん。

 二人ともフランス出身で、サンフランシスコのリッツカールトンで一緒に働いていた。ディデアさんは2014年に独立してケータリング業を始める時、セリンさんを誘った。
 「ワイナリーで総料理長をしていた時は、コース料理の後のスイーツも作っていましたが、私の専門ではなかったので、私の料理と同じようなレベルのカウンターパートが欲しかったのです。料理に必要なブリオッシュパンやフラットブレッドなども作ってもらっています」と、ディデアさん。
 ケータリング用のキッチンを自宅周辺で探したが、なかなか見つからず、ようやく元フライドチキンレストランだったこの物件を見つけ、2カ月かけて、大規模な改装をした。希望通り、二つのキッチンスペースを作ることができ、たまたまカフェスペースがあったので、この店も始めることになった。14席のカフェはこじんまりとしていて、天気の良い日はパディオで食べるのも気持ちが良い。
 ディデアさんはカフェのランチとケータリングの料理、セリンさんは、店での商品とケータリングのデザートを担当している。セリンさんは毎日、約10種類のペイストリー類を12〜20個ずつ作る。皮はサクサク、中はしっとりしたペイストリー「クーン・アマン」が看板商品。シンプルだからこそ、食材の質とシェフの腕前が際立つ。クロワッサン、チョコクロワッサン、ハム&ベシャマンチーズ入りのクロワッサンもよく売れる。ブリオッシュパンの中にクリームチーズやスモークサーモンを詰め、上にトマトのスライスと胡麻などが載った「エブリシング」は珍しく、朝食にぴったりだ。バスク地方出身のセリンさんが作るデザートのガトー・バスクは、アーモンドのクッキー生地にさくらんぼ入りのバニラクリームを詰めたもので、レモンバー、ピーカンバー、ペア&アーモンドタルトなど、どれも小さめで、甘さ控えめで上品な味。常連客が多いので、ペイストリーやデザートの種類は頻繁に変えている。
 ディデアさんは、この店を始める前に11年間、ワイナリーでシェフをしていた。
 「レストランやホテルなどでは私が料理を出して、ソムリエがワインを選びますが、各々のワインに合う料理を極めるワインペアリングをやってみたかったのです。ワイナリーでは、ワインと食べ物を愛するお客様に、どのワインを紹介したいか、そのワインにはどの料理が合うか、どんな方たちが何人、何時にいらっしゃるか、前後に何をされているかなどを考慮して、毎日違う料理を自由に作れることが好きでした」
 独立してケータリング会社を始めてからは、他のワイナリーのワインも使えるようになり取材日直前には、 サンフランシスコで開催されたワインペアリングのコンテストで、参戦した15軒のレストランとケータリング会社の中から、最優秀賞を受賞したばかりだった。
 「企業の千人規模ケータリング、結婚式、個人宅のケータリングなど何でもできます。しっかりお客様と話し合いをして、ご希望を聞き、その日に手に入る最高の食材で料理するという信頼関係を築いています」  30年間のシェフとしての経験と世界中を旅行した経験と知識を駆使して、独特なケータリングメニューを生み出す一方でカフェメニューは、サンドイッチ6種類、サラダ6種類とシンプルだが、食材にはこだわっている。
 チキンサンドイッチには、オーガニックローストチキンとスパニッシュ・ピキオペパー入りアイオリを挟んだり、グリルした野菜のサンドイッチにはチミチュリを入れるなどひと工夫されている。これらにはセリンさんの作るソフトロールが使われているが、ゾイズのプロシュートとペペロンチーノを使ったサンドイッチには、近所にある有名ベーカリー「ナイチンゲール・ブレッズ」(2010年10月号掲載)のバゲットを使っている。一番人気のハム&チーズ・サンドは、フランスのクロックムッシュだが、アメリカによくある冷たいハムとチーズが出てくると思っていた客が、とろけたスイスチーズとブラックフォレストハムが挟まれ、上にも焼き色の付いたチーズが載ったブリオッシュパンが出てきた時の意外性と喜びは相当なものだったという。
 店には、スナックや土産になるような商品も置いてある。ワインの産地なので、カベルネ・ソーヴィニヨンやソーヴィニヨン・ブランなどのワインを使ったワインゼリーを作っている。煮詰めてアルコールが飛んでいるので、ワイン味のスナックだ。手作りキャラメルも説明はないが、柚子入り。
 夏には、3種類のクッキーに地元有名店のアイスクリームを挟んでアイスサンドを作ってみたが、思ったほど売れなかったという。一年目で店を知らない人が多かったので、来年を楽しみにしているらしい。セリンさんは、チョコレート会社「カレボー」の技術顧問をしていたこともあるので、冬にはココアではなく本物のチョコを使ったホットチョコレートを提供している。
 「何がうまくいくか、色々試しているところで、楽しいです。今までは上司の許可を得る必要がありましたが、今はディデアに聞かなくても、私の好きなようにできます。自分達の店を持ったからこそできることです。今後、個人的にはウェディングケーキが作れることを知ってもらいたいです。
ケータリング会社で、ウェディングケーキも提供しているところは少ないけれど、私達は両方できます。ホールケーキの注文販売も始めたいです」とセリンさん。
 現在、ケータリングと店での売上割合は半々だが、ケータリングは2年目で予約が増えてきた。店は、ワイナリー巡りや海岸、川、レッドウッドの森などに続く道沿いにあり、交通量は多いが、確かにここにあると知らなければ、見過ごしてしまいそうな場所だ。しかし、一流シェフ達が始めたこの店は、すぐに有名になるだろう。
(文・写真:田原知代子)

【パスカリン・パティセリー&カフェ】
▽住所=4550 Gravenstein Hwy North Sebastopol,CA 95472
▽電話=(707)521-9348

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