ザ・ネイキッドピッグ・カフェ〈カリフォルニア州〉
コミュニティのためにバス停留所を自らの手で改装
徹底した地産地消メニューを提供

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ダリアさん(右)とジェイソンさん

店舗外観

店舗内の様子

 2014年4月、ダリア・マルティネスさんとジェイソン・サカシュさんは、サンフランシスコ郊外サンタローザ市に「ザ・ネイキッドピッグ・カフェ」を開店した。ダウンタウンとショッピングセンターの間に、白い文字で「the Naked Pig FARM TO TRABE FOOD(農家から食卓への食べ物)」と書かれた長距離バスの停留所だった建物。外観だけではそこが何なのか分からないが、世界中から多くの人が訪れ、人気を博している。

 ダリアさんは、大手アパレルメーカーでスタイリングと商品デザインの仕事に携わっていたが、もっと自分の主義に沿ったことをしたいと退職し、サンフランシスコで若い女性が経営する小さなコーヒーショップで働き始めた。その頃、インドの環境哲学者、ヴァンダナ・シヴァ氏の著書「アース・デモクラシー」を読み、女性を中心に環境を意識した食べ物ベースが機能する経済の考えに共鳴した。
 「今までも愛する家族や友達に料理を作ってきましたが、もっと多くの人に料理を作り、社会に貢献したいと思い、早速、ボスにコーヒーショップを夜に借りることができるかを聞きました」
 そうして、音楽関係の仕事をしていたジェイソンさんと共に、ファーマーズマーケットで買った食材を使った3〜4品のコース料理のみの夕食を提供し始めた。毎回テーマを変えたメニューやDJ・アーティストを招いたイベントは好評だった。
 その後、2人の故郷であるサンタローザ市に戻り、2012年からダリアさんはファーマーズマーケットで出店を始め、ジェイソンさんは小さな乳牛農家で働き始めた。融資を受けず、借金もせずに、あらゆる面で持続可能なビジネスをすることが重要だったので、小さなステップを積み重ねてきた。
 「最初は、メキシコ系の母から教わった惣菜パンを売っていたのですが、お客様は温かい朝食を求めていました。私にとってもその方が準備も簡単だったので、自分たちが食べたいものを出して、何に人気が出るかを探りました」
 2年間、地元の農家との絆を培い、独自の朝食・ブランチのコンセプトが構築できたところで、所持金を全て投資し、バス停留所を改装した。
 「犯罪と貧困の巣窟だった見苦しい建物を、自らの手で真の改装をするのは、コミュニティにとっても良いことだと思いました。障害ばかりでしたが、乗り越えようとする心があると、クリエイティブになれます」 とダリアさん。
 ジェイソンさんも「自然な食の環境で、人の手で木などを巧みに使った創造空間にしたいと思いました。テーブルは私が作り、壁には鹿の角の代わりに、美しい枝を飾りました」と言う。
 約8坪の小さな店内は、味わいのある再利用の木材と灰色の壁、ラスティックなテーブルと白い椅子が印象的な暖かく洗練された異次元空間になっている。ダリアさんが料理を、ジェイソンさんがブランディングやデザインを担当し、二人は声を揃えて、お互いを良きパートナーと呼ぶ。
 「ザ・ネイキッドピッグ」という店名は、アメリカの朝食はベーコンとソーセージ抜きには考えられないことから名付けた。同カフェの特徴は、地元で育った豚肉・野菜、放し飼いされた鶏の卵のみを使っていること。マダムクロックムッシュは、オーガニックカンパーニュにベーコン・バシャメルソース・グリュイエールチーズ・ポーチドエッグを載せたオープンサンドで、カリカリの皮、柔らかくなったパンとソースの組み合わせがおいしい。また、アメリカではワッフルにメープルシロップをかけ、ベーコンを添えて食べるのが一般的だが、この地域ではメープルシロップが採れないので、ハチミツをベーコン入りワッフルにかける。
 「メープルシロップで繊細なワッフル生地を圧倒しないためでもありますが、お客様に理解してもらえない時があるので、改善すべき点の一つです。メープルシロップをかけたワッフルはどこでも食べられるので、ここでは他とは違うおいしいものを食べていただきたいと思っています」
 ダリアさんの創造力が発揮される特別メニューは、2週間毎に変わる。自家製プラムプレザーブとオーガニックホイップクリームが載ったワッフルには、エディブルフラワーが添えられ、上品な甘さがフワフワのワッフルの味を引き立てる。カラメル化したリーク入りワッフルには、パウダーシュガーさつまいも、リーク、ブリチーズ、セージ入りのフリタータも珍しい。春サラダは、絶妙な茹で具合の空豆、ベビーアーティチョーク、シュレッドされた人参、バターレタスなどの春野菜と自家燻製した白身魚に、庭のハーブ入りクリーミードレッシングがかかっている。
 2年前の開店時には、ダリアさんの弟を含め3人だったが、今では9人の従業員を雇うようになり、給仕の人達にも専門職ぐらいの給料を払っていると言う。
 「車輪の部品のように、みんな違う技能を持って、同じぐらい貢献しているので、公平な分配が大切だと思います。私たちは金儲けのためではなく、生計を立てるためにカフェを経営しているので、高級レストランで提供している質のものを10ドル(1,100円)〜17ドル(1,900円)の低価格で提供しています」とダリアさん。
 ジェイソンさんに、カフェを始めて一番大変なことを聞いてみた。
 「人生で何かに対し心を込めていると、まずその部分を批判されることです。とても刺激を受けて喜んでくださる方もいますが、うんざりされる方もいます。私たちは自然に芸術の溢れた環境を、コミュニティーのサポートのために作りましたが、そういう環境を求めていない少数の人たちに『食べ物は食べ物だし、環境は環境で、誰が気にするんだ』と批判されます。ナイーブなんだと思いますが、カフェを始めた時、そんなことを言われるとは考えもしませんでした」
 そんな中でも、地産地消に徹底的にこだわり続け、コミュニティを大切にしていると、ダリアさんとジェイソンさんの考え方、着実に夢を実現していく強さ、類い希な美意識を駆使したおしゃれな空間作りなどに惹かれ、世界中から共感する人たちがやってくるようになった。
 現在は、2軒目のレストラン「フラワー&ボーン」開店に向けて、約45坪の古くて美しい商業建物を改装している。旬の野菜や果物を保存するプレザーブ作りに対する2人の情熱は深く、新店舗では、まずプレザーブを駆使した夕食を提供し、将来的には朝食や昼食も提供する予定だ。
(文・写真:田原知代子)

【The Naked Pig Cafe】
▽住所=435 Santa Rosa
Ave.Santa Rosa, CA 95472
▽電話=(707) 978-3231

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