丸栄製パン(POCO A POCO)〈滋賀県長浜市〉
給食パンは規定演技と同じ
学校給食事業の可能性を求め挑戦し続ける

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辻井孝裕氏

社屋外観

 丸栄製パンM(辻井孝裕社長)は、昭和25年3月1日に創業。3代目の辻井氏は、やりたいことよりもやらなければならないことを積み上げて会社を継いだ。現在は、学校給食事業と卸、市販ベーカリー(POCO A POCO)を滋賀県長浜市1カ所で営んでいる。

 企業理念は「感謝」。命を頂く「食」の行為に対し、その命に感謝し、仕事を通じて貢献する。「努力・継続」。「食」という人を育む行為により、自らを育み未来へとつなげる。
 経営方針は2つの「つくる」。造る:命に対しての責任〜頂く命、預からせて頂く命〜を持ち、真実のものづくりへと邁進する。創る:食材の提供のみならず、豊かな食生活の提案者として本物を提供していく。  辻井社長は、同社の事業内容と将来展望を次のように述べた。
《学校給食事業》
 滋賀県は、学校給食パンと米飯が別になっており、当社も別会社(滋賀米飯M)にしている。本来、学校給食パンの全てを納入する業者に対し、国が米飯給食を導入する時点で自治体の指導や補助金で炊飯事業を併用できる工場形態が確立した。しかし、滋賀県は琵琶湖の水質汚濁を防止する条例が施行され、各工場に浄化槽を取り付けなければ炊飯事業の認可が下りなかったため、米飯を分離せざるを得なくなった。その結果、全国でも特殊な例となる、学校給食パン納入業者が出資して、県内に2カ所の米飯工場を建設した。当時は、出資だけして目に見えるメリットを感じなかったが、米飯に頼らずパン製造で生き残る道を考えたことによって、あまり政策に左右されることなく現在まで継続できたと思う。
 学校給食のみを生業としている企業は、国の施策や市町の方針が一変すると衰退を意味する。現在、学校給食パン納入業者は6社。パン給食は、月に2.4回。ところが、納入業者が6社になったことで、広範囲を担当できるようになり、1カ月間全ての日の仕事が埋まっている。実際、生徒数の減少以上に業者数の減少が勝っているため、考えようによっては活路が見出せると思う。広範囲になると納入に苦慮するが、それに対応するノウハウを培い、仕組みを構築することにより可能性は広がる。弊社での最も遠隔地は、福井県坂井市(約100km)。越境は、自治体からの要望。地域のパン納入業者が月に1回では、運営が不可能になり廃業に追い込まれたが、月に1回のパン給食は自治体として譲れず、県内の業者に依頼するも引き受けてもらうことが叶わず、県外に納入業者を求めた。そのため、学校給食の制度に則らないゼリーやヨーグルトなどと同様の調達方法になり市販パンを納入している。プティフランス、バゲット、クロワッサン、ロールパン、ナン、ホカッチャなどレシピは約30種にのぼる。その他に、奈良県、京都府などにも納入している。全パン連に対して、このような問題が発生したならば、近畿東海北陸ブロックでカバーすることを提言している。学校給食は、決してなくなりはしない。各県パン協同組合の枠を跨ぎ、納入可能な地域へ範囲を広げて頑張らなくてはならないと考える。様々な方法があるにも関わらず、自社で完結しなければならないと考えているようだ。1日1000食の製造依頼しかないが、納入インフラが構築できている業者があるとする。また、パン製造に長けているが遠隔地納入が不得意な業者があるとする。それならば、得意分野を融合して伸ばす方法がすぐにでも考えられる。
 全パン連は、都道府県のパン協同組合から成る連合会組織であるため、各理事長は自組合の施策を通すために集まられている。しかし、下部組織の全青連は、任意の団体で各ブロックから選出されているため、全体を動かすような大きな話ができる場。全青連が全パン連の政策提言等を行わなければならないと考える。
 週1回の学校給食パンを確保してもらうだけで、地域の防災・農産物加工拠点を担うことができる。新たにそのような施設を建設し機能させるためには、莫大な費用とエネルギーが要る。また、自組合のできることを持ち寄ること(配送・生産の共通化・新製品開発)により、新たな展開が生まれる。これらを訴えているが理解し、賛同してくれる人が少ない。
 学校給食の制度を変更しなければ、思うようにパン給食を残せない。学校給食でパンが減った年代は、その人たちが大人になってからパンの消費量が少なくなっている。逆にパン給食のみで育った年代は、年をとってからもパンを多く食べる。私たちが今、頑張ってパン給食を少しでも増やさなければ、将来に繋がらない。例え日本パン工業会メンバーと言えど、パン給食を応援しなければ、次世代の客が減ると思う。
 学校給食事業は、パンを食べたくない人にもパンを届けなければならない商売なので、信念がしっかりとしていなければ務まらない。そこが、リテイルベーカリーとの大きな差だと考える。従って、パン産業としての強みを構築しなければならない。個々の企業というより学校給食パン業としての在り方、公的な存在として今後どのように継続するのかを明確にする必要がある。
 学校給食事業社が使用する原材料・機械、雇用などはリテイルベーカリーとは桁が違う。また、同じ製品を大量に生産するため、仕事の練度に格段の差が出、数による社会貢献度は非常に大きい。毎日何万食ものパンが平均して売れる商売は他にない。食に関する影響力は極めて大きい。
 大手製パンメーカーとの違いは、不特定多数の客を対象にしているのではなく販路の決まった客に対し一定量の製品を届けるため、客を創造することができる。
 しかし、決められた材料で同じ製品しか作らないと勘違いしている業界人が沢山存在する。その人たちは、規定演技の難しさや決められた条件下でも優劣が付くことを知らないと思っている。また、手数が少ないため技術がないと思われているようだが、発酵を例に挙げると、量が多い分チャンスも多く、生地を見極めるという技術力は高い。フランスパンの配合は確立されている中で、味に優劣ができることと少しも変わらないと思う。まして、オリジナルの学校給食パンを作っている事業者も多くある。
 その裏付けとして、第二回ベーカリー・ジャパンカップ食パン部門で、同社岡嶋和也氏の作品「淡海の薫り(滋賀県産小麦100%使用)」が決勝に進出した。
 給食という決められた枠の中で、数量が確保されているということにあぐらを掻き、自分たちの都合を優先して一所懸命にならない事業者を全体のイメージとして印象付けられることを心外に思う。
 このように、学校給食事業ならではの特長を知ってもらうことにより、さらに楽しんで仕事ができ、誇りを持つことができる。学校給食事業として、挑戦していない部分が多く、可能性はいくらでもある。
《卸事業》
 学校給食を基軸に考えると、春・夏・冬の休みをどのように活用するかが、課題になる。弊社は、リゾートホテルの朝食パンを受注している。リゾートホテルは、学校が休みの時に繁忙期を迎えるため、上手く重ね合うことができる。このような仕事を入れて、年間の稼働率を平準化しなければ常用雇用ができなくなる。波動人員をパートやアルバイトに頼っていると、ノウハウの蓄積ができず、何時まで経っても安定した品質のパンができないばかりか、国産小麦に変更した場合など技術対応ができなくなる状況に陥る。学校が休みの間は、工場の稼働が重要で、利益が少なくても赤字を出さなければ良いと考えると、大手や通販会社に比べ価格競争力が生まれる。そこまで考えると一層おもしろくなる。
《市販ベーカリー事業(POCO A POCO)》
 地方都市のリテイルベーカリーとして、多店舗展開等はあまり考えていない。卸等で商談に来られる場として、パイロット的な要素で継続したいが、店舗運営だけで採算をとることは非常に難しい。
 学校給食を提供する事業者は、店舗を持って自分たちが考えた製品を常に作っていなければ技術レベルが落ちる。また、客との接点が無くなり、最終顧客が見えなくなって想像力を失う。弊社スタッフは全員、給食・卸・市販のパンを作ることができ、包める・丸められる・折り込める技術者が学校給食パンを製造していることが強みと考える。
 代表的な製品は次の通り。
▽滋賀県産全粒粉パン=独自開発の特殊製粉方法で小麦ふすまの部位も全て、ミクロン単位で挽いた微細全粒粉で作っている。全粒粉配合率の高い滋賀県産全粒粉パンは小麦本来の栄養素を余すことなく食べられサクサク感が違う。
▽豆乳おからパン=比叡ゆば本舗「ゆば八」とPOCO A POCOが共同開発した商品。「口に美味しく、体に美味しい」をメインコンセプトに、水を一滴も使わず「豆乳」で生地を仕込み「おから」を10%加えた生地は、乳・卵を使わず、しっとり・ふんわりを実現した。毎週火曜日製造。

【丸栄製パン(POCO A POCO)】
〒526-0021滋賀県長浜市八幡中山町678
TEL0749-63-0111、FAX0749-63-0044
▽年商=約1億4千万円
▽従業員数=20名(パート・アルバイト含む/平均年令27歳)
▽主要取引先=コープしが・リゾートトラスト・長浜ロイヤルホテル・滋賀県学校給食会・長浜市立病院・彦根中央病院・滋賀大生協・黒壁・旬楽膳・阪急百貨店・大丸百貨店・オークラアカデミアパークホテル(順不同)
【滋賀米飯】
〒522-0029滋賀県彦根市地蔵町97
TEL0749-24-3500、FAX0740-24-3524

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