アリズメンディ・ベーカリー〈カリフォルニア州〉
メンバー全員がオーナーで全ての仕事を分担
パン作りの夢を実現し他地域に進出も

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メンバーのナタリーさん、フロンズさん、イレインさん、フランクさん

サンドイッチを作るトレバーさん

店舗外観
 

店内の様子

日替わりピザ

ギリシャ風サンドイッチ

 アリズメンディ・ベーカリーは、カリフォルニア州ベイエリアに5店舗ある協同ベーカリー。1971年にバークレー市で創業した「チーズボード」という協同チーズ店兼ベーカリーが、近隣のコミュニティから「私の町にも協同ベーカリーを開いてほしい」という要望に応え、20年前に「アリズメンディ・ベーカリー」の一軒目を開店した。

 「アリズメンディ」という名前は、1956年にスペイン・バスク地方モンドラゴンで協同事業を始めたホセ・マリア・アリズメンディアリエタという神父の名前に因んで付けられた。協同事業自体は以前から存在していたのだが、この神父は、100以上の協同事業が集まる民主的な町を作ったことで有名。
 協同ベーカリーでは、そのベーカリーで働くメンバー全員がオーナーで、仕事を分担し、話し合いで全てを決める。「チーズボード」を含む6店舗が「アリズメンディ協会」に属しているので、ベーカリー間の結びつきも強く、助け合っている。協会にいる3人が、全体を取りまとめ、各店の会計担当とともに会計や法的助言をしたり、新しいベーカリーの場所を決める。
 今回取材したサンラファエル店は、2010年にオープンした最も新しい店。アパートの1階にあるので、平日はアパートの住人や近くのビジネス街で働いている客が多く、週末は家族連れなどで賑わう。
 一店舗のメンバー定員数は12人だが、サンラファエル店では、結婚で引っ越したメンバーなどがいて、現在6人。勤続5年が1人、3年が数人。インタビューしたマーケティング担当のナタリー・バドルフさんは1年たったところ。
 ナタリーさんは、10年間小学校の教諭をしていたが、家族や友達のためにいつも菓子作りをしていたので、自宅で小さなベーカリービジネスを始めた。しかし、もっと大きいベーカリーで働きたいと思っていた時に「アリズメンディ・ベーカリー」のことを知り、パン作り、顧客対応、店舗運営など全てにおいて、皆で一緒に少しずつできることに感銘を受けた。
 「家でやっていた時とは全然違う種類のベーキングだったので、一から学ばないといけなかったのですが、それも楽しかったです。入店してからは、これがやりたいことだと分かったので、自分個人の店を始めることはもう考えていません」
 空いている6人のメンバー枠には、7人の候補者がいる。候補者は、面接に合格後、まず3時間、キッチンでメンバー全員と働く。メンバーがまた来てほしいと思ったら、候補者として6カ月間試用期間店で働き、その後、メンバーになるか、試用期間を伸ばすか、やめてもらうかを、メンバーによる投票で決める。
 「料理やパン作りの技術、試用期間中にどれくらい成長したか、経営面でどういう貢献ができるか、他のメンバーとの付き合い方、協同ベーカリーに適しているかも見ます」
 メンバーの人数が少ない時は、長めの勤務時間になり、多めの仕事を分担し、人手が必要な時は、他の店から手伝いに来てもらう。メンバーはいつでも好きな時にやめることができるが、その後、「アリズメンディ・ベーカリー」の他の支店で働きたい時は、店の許可を得る必要がある。
 メンバーの経歴は様々で、料理の仕事をしていた人や会社経営者だった人もいる。
 「家族と働いているような感じです。パン作りの経験がなくても、パンが好きで、学ぶ意欲があれば入ることができます。私はパン作りの経験は少ないですが、在宅で個人事業をしていたので、経営の経験があります。誰でも得意な分野で貢献できます。皆に共通しているのはパン作りへの情熱です。ずっと抱いていたパン作りの夢を実現したいと思い、前の仕事をやめた人ばかりです。各々、違う才能があるので、うまくいきます」
 アリズメンディ・ベーカリーの全店で「チーズボード」のサワー種の元種を使い、同じレシピを使っているが、各店舗のメンバーや客の嗜好によって、店独自のレシピもある。全部で約35種類のパンやペイストリーが販売されているが、チーズロールとグリッシーニは、ほとんど毎日売り切れ、チョコレートチップクッキー、パンプキンマフィン、日替わりスコーンも人気だ。パンプキンマフィンは、パンプキンのピューレが沢山入っているので、玄米粉を使用していても非常にしっとりしている。最近復活したというコーンチェリースコーンも、コーンブレッドのようなスコーンにチェリーが入っていておいしい。
 昼食メニューでは、全店にある「チーズボード」のレシピを使ったピザが有名。メンバーが交代で決める月替わりのサンドイッチは、6月は桃で、7月はギリシャ風だった。ギリシャ風サンドイッチは、サワー種のパンに鶏もも肉のロースト、ザジキソース、赤玉ねぎのピクルス、トマト、レタスが挟まれ、ボリュームたっぷり。
 協同ベーカリーで大変なことを聞いてみた。
 「メンバーが12人いれば皆、違う意見があるので、物事を決めるのは難しいです。月に一度のミーティングで、色々なことを決めます。決定事項の種類によって、何パーセントの合意が必要か決まっていますが、大抵75%です」
 万が一、メンバー間で問題があり、話し合いで解決できない場合は、同じ店か、他の店か、協会の人に調停役を頼むことができる。そのための調停役ボランティアのリストもあるそうだ。
 「アリズメンディ・ベーカリー」は、協同の仕組みがしっかりしているので、パン作りの仕事をしたい人たちが夢を実現しやすくなっている。これからどんな地域に進出していくか楽しみだ。
(文・写真:田原知代子)

【アリズメンディ・ベーカリー】
▽住所=1002 4th St.San Rafael, CA 94901
▽電話=(415)456-4093

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全粒粉サワー種パンなど

スコーン・マフィンなど