バンプシティ・ベーカリー〈カリフォルニア州〉
天職と感じたグルテンフリー専門ベーカリー
今後はシュガーフリーやアクアファバにも挑戦

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エミリー・フロイドさん

店舗外観

店内の様子
 

店員のマーラさん

クッキーを作るエミリーさん

ソルティデイト、トールハウス・チョコチップ、スティッキートフィーなど

 サンフランシスコから車で40分ほど北上したぺタルマ市のダウンタウンに「バンプシティ・ベーカリー」が昨年10月に開店した。このベーカリーは、グルテンフリー専門店で、カクテル味のカップケーキで人気を博している。

 オーナーのエミリー・フロイドさんは、環境生物学博士号を取得後、環境コンサルタントをしながらベーカーを副業にしていたのだが、店を持つまでの道のりは厳しかった。
 2011年から、祖母に教えてもらった伝統的なパイを作ってファーマーズマーケットで販売し始めた。友達にカクテル風味のカップケーキを食べさせたところ好評だったので、カップケーキも販売するようになった。  「コンサルタントの仕事は、不規則でストレスが多く、私にはクリエイティブな仕事が必要だと思いました。私自身、カクテルを飲むのが好きで、作る比率などは科学的です」とエミリーさんはいう。
 『バンプシティ・ベーカリー』という店名は、その頃住んでいたオークランド市(サンフランシスコの東側)のニックネームに因んでつけた。ビジネスが大きくなるに従い、コンサルタントの仕事を減らし、一度は思い切って3カ月休みをとって、ベーキングを仕事にできるか試してみた。ファーマーズマーケットとイベントの数を増やし、卸業も始めたが、その収入だけでは生活できないことが分かり、パート社員として復職した。しかし、会社の閑散期にあたり、仕事が少なかったため、実家に戻ることにした。
 「父親は私の選択が理解できず、心配してくれるが故実家に居辛く、1年後に見つけたペイストリーシェフの仕事もボスと上手くいきませんでした。そんな時に、時間単位で借りていた業務用キッチンのオーナーに、コープベーカリーのマネージャーの仕事を紹介されました」
 その仕事は、エミリーさんを含む起業家が作るエンパナーダ、クッキー、キッシュ、カップケーキなどを売るベーカリーだったが、郊外の高級住宅地にあるショッピングモールでブランド力のない店は受け入れてもらえず、8カ月後に閉店した。
 「個人的には、前の仕事を辞めることができ、融通が効くスケジュールでマネージャーの経験をし、キッチンを自由に使うことができて幸運でした。この時に、沢山グルテンフリー商品の注文を受けて、おいしいグルテンフリー商品の研究を始めたことが、今に繋がっています」
 人気のあったビーガン(純粋菜食主義)の商品をグルテンフリーにする過程で、科学の知識が役に立ったという。玄米粉、米粉、ソルガム、タピオカ粉入りのグルテンフリー粉を使い始め、ビーガンの商品には、卵もバターも牛乳も使えないので、つなぎにナツメヤシの実やナッツバターを使った。
 ビーガンでグルテンフリーの商品があると宣伝できるようになったので、卸先が増え、収入が安定してきたが、時間単位でキッチンを借りている間は利益が出難かった。エミリーさんは再び実家に戻り、昨年は8〜9カ月間、卸業をベーカーの友達を雇って続ける傍ら、異なるコンサルタント会社の社員として働いた。
 「小規模な会社で定収入を得て働けたら、ベーキングをしなくても大丈夫かもと思ったのですが、友人がクラウドファンディングで最初のCDを出して夢を叶えたのを知って刺激を受け、毎晩、ネットで賃貸キッチンの場所を探し始めました。この仕事はコンサルタントの仕事と違って、私が情熱を持って取り組める天職だと思いました」
 オークランド市周辺の賃貸物件は高く、ぺタルマ市にも検索を広げたところ、探し始めて2、3日目に広さも賃貸料も理想的なこのカフェを見つけたという。この場所でイギリス風カフェをしていた人から設備を買い取るために、Kivaというマイクロビジネスローンを組んだ。
 そして、遂に昨年10月、「バンプシティ・ベーカリー」のリテイルが開店した。取材日、8種類のクッキーのうち、6種類がビーガンだった。中でも人気があるのは、ジンジャークッキーと、スモアクッキー。ジンジャークッキーは、ナツメヤシの実、グルテンフリー粉、亜麻、糖蜜、砂糖、スパイス入りで、ビーガンでありながらナッツ&グルテンフリーでもある。エミリーさんが推奨するソルティデイトクッキーは、ナツメヤシの実、ピーカン、アーモンド、チョコチップ入り。ナッツの香ばしさ、クッキーの甘さと上に載った塩の味加減が絶妙で、これから間違いなく人気が出ると思う。
 カップケーキの人気商品は、ベイリーズ&ジェムソン、アイリッシュコーヒー、オールドファッションだ。パウンドケーキのレシピをグルテンフリーにしたというカップケーキのスポンジは、酒に浸しても大丈夫なようにしっかりしている。フロスティングにカクテルを混ぜたり、カクテルにドライフルーツを漬けるなどして、ほのかな香りと味を出している。お客様からのリクエストで、スコーン、マフィン、朝食サンドイッチ、キッシュなど朝食用商品を加えた。パイの注文も受け付けている。
 開店後3カ月の間、営業中に電気が突然切れて、早めに店終いをしなければいけなくなったり、クリスマスには特別注文が多すぎて、エミリーさんが病気になって寝込んでしまったこともあった。
 「ビジネスを始める時、どれだけ大変か事前には分かりません。今まで一人で育ててきた赤ん坊のようなものなので、最初はコントロールが難しいですが、人を雇って、助けを頼むことを学んでいるところです」
 最初は、週2日朝5時から、分散する15軒の卸先へ半日かけて配達した後、店で8時間働いていたが、今は人に任せているので、充分な睡眠がとれるようになったという。店員を雇い、ボーイフレンドと母親の助けも得て、週末の午後のみだった営業時間が、今は金土日曜日の10〜16時になった。
 「卸業の収入があるので、この店舗を続けます。奥まった場所なので、お客様に見つけてもらうまでに時間がかかると思います」
 自分の店とキッチンを手に入れ、ようやくビジネスが軌道に乗る可能性が見えるようになったというエミリーさんは、今後、グルテンフリーのロールパンをカフェに卸すことやシュガーフリー商品の開発、アクアファバ(ひよこ豆の煮汁)を使ったビーガンメレンゲの試作もする予定らしい。
(文・写真:田原知代子)

【Bump City Bakery】
▽住所=122 SUITE B,, American Alley Petaluma, CA 94952
▽電話=(510)882-2880

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