テイスト・キッチン&テーブル〈カリフォルニア州〉
風味を研究するペイストリーシェフにキッチンを全任
多角的提携で業績急上昇

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店舗外観

店内の様子

ジェリー・ナヴァスさん

 2014年、ロッシェル・エドワードさんとロレンゾ・ジョーンズさんは、サンフランシスコ郊外の小さな町フェアファックスに「テイスト・キッチン&テーブル」を開店した。大きなL字型の木製ベンチが店の中央にあり、照明を落とすとベーカリーカフェというよりビストロのようだ。

 店名が「キッチン&テーブル」なのは「全てキッチンで作り、すぐにテーブルに出す」というオーナーの理念を知ってもらうため。できるだけ地元の農家から有機食材を購入し、一から作っている。
 ロッシェルさんは以前、刑務所の心理療法士だったが良い食べ物を提供して、違うかたちで地域社会に貢献したいと、この店を始め家庭的なペイストリーを作っていた。開店から3年間で彼女の役割は徐々に変わり、現在は人事面とネットワークを担当。ロレンゾさんは地元の商工会議所で働きながら、ビジネス面を担当し、二人で店舗運営をしている。2015年にエグゼクティブ・ペイストリーシェフとしてジェリー・ナバスさんが入ってからは、ジェリーさんにキッチンを任せている。商品も創業期の家庭的なイメージから、芸術的な商品に変化した。
 ジェリーさんはミッシェラン1つ星レストランでシェフをしていたが、精密度の高い技術を求められるペイストリーシェフの方が向いていると転向し、フランスで有名なペイストリーシェフの下で1年間修業した。
 「私は、洗練された光沢のある芸術的なペイストリーに惹かれますが、自然に囲まれたフェアファックスでは、クイニーアマンやクロワッサンのような素朴なペイストリーが人気です。西海岸のお客様は、毎日仕事に行く前に買って食べられるようなカジュアルなものを求めておられるので、美しいけど、美しすぎて崩したくないとまで思わせないような商品を作っています。お客様が馴染みのないものも提供して、試してもらいたいと思っています」
 自然の原料を使い、色々な香りを再現した香水を作ろうとしているフランスのペイストリーシェフに倣って、ジェリーさんは木の風味をチョコレートやジュニパーベリーなどを使って再現しようと研究中だ。バーでおいしいカクテルを見つけると、その組み合わせをペイストリーで再現することもあるという。
 「スコーンは、ベーカー達が自由に風味を作れるようにしています。私の番の時に、ジェニパーとチョコの組み合わせや、サボテンの実とラベンダーの組み合わせを試してみたら、おいしくて驚きました」
 ペイストリー類で一番人気は、毎日50〜60個作るサクサクのクロワッサン。2番目は玄米粉、米粉、ポテトスターチ、タピオカスターチを使った、しっとりしたグルテンフリー・バナナブレッド。グルテンフリーの商品をもっと作ってほしいという客の要望に応えるため、おいしいグルテンフリー・クロワッサンも研究している。
 カフェメニューで一番人気は、イングリッシュ朝食サンドイッチ。ベーコン、チェダーチーズ、卵を、焼き立てのイングリッシュマフィンで挟むだけなのだが、良い食材を使っているので一度食べると毎日食べたくなるそうだ。飲み物では、ブレットプルーフ(防弾)コーヒーがよく売れている。コーヒーにココナッツオイルを入れることで、カフェインの刺激が和らぐと、アメリカ全土で人気上昇中。
 「私はインスタグラムで世界中のトレンドを見て、インスピレーションを得ています。多くの人がインスタグラムを常に見ているので、お客様に自分がどんなことをしているかを知ってもらい、店に来てほしいと思うのなら始めるべきソーシャルメディアです。今は、オーストラリアのインスタグラムからインスピレーションを得て、縞々の光沢がある芸術的なクロワッサンを目指しています。人気が出ると、他の店に真似されるので、常に新しい方法を考えて、進化しなければいけません。真似されると、それだけ注目されているというプライドを感じます」
 顧客の半数が近所の常連というベーカリーカフェは繁盛しているが、全体の売上のうち、店頭販売は1割で、卸業とケータリングが9割というから驚きだ。4カ月前に、道の向かい側にある大きなゴルフ場と提携し、特別な行事やイベント時に、ケーキやペイストリーを卸し始めてから、売上は飛躍的に伸びた。母の日のパーティには、150個のエクレア、200個のレモンバーの他、数百個単位の大口注文があった。
 「ゴルフ場では、頻繁にあるパーティの度に、色々なベーカリーにペイストリーなどを注文していたようですが、今は弊店が注文を受ける唯一のベーカリーなので、先方も便利が良く、店にとっても新しい商品を楽しみながら提案できる良い機会で、顧客の反応も聞くことができます」とジェリーさん。
 数カ月前から、フェアファックスに近いサンラファエル市にある本屋内のカフェスペースの運営も始めた。他にも、地元発祥の「エクエイターコーヒー」と提携、現在は4つのコーヒー店のうち3店舗にペイストリーを卸している。将来、全面提携することになれば、卸し店舗が増えるに従って「テイスト」のペイストリーをより多くの人に知ってもらえることになる。
 週に一度、同店が食材と場所の提供と宣伝を行い、異なるシェフの卵がビーガンやハンガリアンなど好きな食材で夕食を作る「ポップアップディナー」を実施している。彼らは自分の料理スタイルを試し、客の反応を知ることができ、地元の人たちは様々な食事が楽しめる。ジェリーさんも、フランス料理のコースを提供する予定。また将来、広いキッチンに移ることがあれば、ペイストリーのクラスを開催したいという。
 「ここでは、私の好きなように様々な風味を研究できる贅沢があり、オーナーは私の仕事を尊重してくれています」
 オーナーやマネージャーが同席せず、エギュゼキュティブ・ペイストリーシェフに任すという店舗インタビューは初めてだったが、オーナーの懐の深さと、それに応えるジェリーさんの力と情熱を感じた。

【テイスト・キッチン&テーブル】
▽住所=71 Broadway Blvd.Fairfax, CA 94930
▽電話=(415)455-9040

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陳列ケースに並ぶ商品

ハム&チーズクロワッサンなど