ザ・ホールパイ〜分けるかどうかはご自由に〜〈カリフォルニア州〉
切り売りしないパイ専門店
その人だけの特別なパイを完成形で食べてもらいたい

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ジュリア・フリースさん(左)とトリシア・デイビスさん

店舗内の様子

外観
 

旬のチェリーパイ

ローンウルフなど

 昨年10月、カリフォルニア州サンタローザ市にパイショップ「ザ・ホールパイ」がオープンした。オーナーは、トリシア・デイビスさんとジュリア・フリースさん。ビジネス担当のジュリアさんは、トリシアさんとは長い付き合いだと話してくれた。

 「私はトリシアが子供劇団で演技をしていた10代の頃から、舞台監督として知っていました。5年前から一緒にビジネスを始めたいと思い、色々考えてきました。ビジネス的にレストランであらゆるものを作るより、何か一つのものに焦点を当てたいと、フードトラックも考えていました」
 トリシアさんは、パイに思い入れがあった。
 「私は長い間、高級レストランのウェイトレスをしていて、この店を始める前は、カップケーキやクッキー、ブラウニーなどを作るビジネスもしていましたが、食べるものを作る原点は、家庭科の先生だった祖母が作り方を教えてくれたパイです。今、政治的にもストレスを感じている人が多いので、元気付けるために懐かしい食べ物が良いと思いました」
 市内には、パイを作るベーカリーはあっても、パイ専門店はなかった。
 「この辺りは密集した住宅地で、共働きの家庭が多いため、パイを夕食やデザートにお持ち帰りしてくれます。出産したばかりの人に持っていく手土産にも最適です。チキンポットパイや野菜パイを冷凍庫に入れておけば、いつでも食べたい時にオーブンで焼いて、食べられますから」とトリシアさん。
 アメリカでは、昔からチキンポットパイは家で作って、食事として食べられてきたが、次第に廃れてきた。『ザ・ホールパイ』のチキンポットパイ「ソングバード」は、鶏肉、人参などがゴロゴロ入っていて、食べ応えがある。他にも、牛ショートリブと玉ねぎ入りで、上にマッシュポテトを載せた「ローンウルフ」や、牛ひき肉、燻製唐辛子、黒豆、コーン入りの「ホットタマレ」、ポルトベロマッシュルーム、松の実、ほうれん草入りの「ファームガール」などがある。
 「ファームガール」など、パイのニックネームは、最初はトリシアさんが一人で考えていたが、顧客もおもしろがってくれるので、今は皆で考えているという。客にとってこの店での体験が特別なものになるように、という工夫は、1930〜40年代のアメリカを思い出させる内装や、トリシアさんの母が作ってくれるレトロなエプロンなどからも感じられる。
 開店してから10カ月間、様々なパイを提供してきたが、ひとつ解ったことは、客はあまりパイの味で冒険をしないこと。ジュリアさん推奨の「マカロニ&チーズパイ」や、トリシアさん推奨の「ソーセージとカイエンペッパー・グレービーパイ」、「トリックスシリアルのパイ(甘いシリアルと牛乳で作ったカスタードに同じシリアルを砕いたパイ生地)」はおいしかったが、売れ行きが悪く販売を中止した。
 反対に、アメリカの代表的なパイ「アップルパイ」と「チキンポットパイ」の販売数は他を近づけず、リンゴの旬でない時は、その季節のフルーツのパイがよく売れるという。取材時には、サクランボそのものの美味しさが楽しめるチェリーパイと、アプリコット・ネクタリン・プラムパイがあった。冷蔵ケースに入ったスイーツパイには、バナナクリームパイや、ココナッツクリームパイ、バタースコッチパイなどがあり、チョコレートクッキーで作ったパイ生地を合わせた濃厚なチョコクリームパイや生姜入りパイ生地のレモンクリームパイ、黒糖入りサワークリームが上に載ったライムパイが売れ筋。
 グルテンフリーパイのニーズは思っていたほど大きくはなかったが、2種類ほど常備し、喜ばれているそうだ。
 「トリシアのグルテンフリー商品への取り組み方は、定番のパイ生地に似せようとするのではなく、元々グルテンフリーのものを活かして生地を作っています」とジュリアさん。
 この店の特徴は、『ザ・ホールパイ〜分けるかどうかはご自由に〜』という店名通り、丸ごとのパイしか売っていないこと。大きさは、ハンドパイ、パーソナルサイズ、ファミリーサイズの3種類あるが、切り売りはしていない。
 「デザートは私の生活の大切な部分で、サラダは分け合いたいけれど、デザートは分けずに、一人で食べたいのです。パイを切ると、ぐちゃぐちゃになってしまって、少し残念ですが、一人分のパーソナルサイズだと、自分だけのパイで特別感があり、完成形を味わえます。それに、切り売りだと、全部売れない場合、残りを捨てなければいけなくて無駄になります」とトリシアさん。
 「丸ごとのパイの方が持ち運びもしやすいです。週末、店で食べる人は少し多くなりますが、通常80〜90%の売上は持ち帰りです」とジュリアさん。
 平日の販売数は約100個で、週末はもっと多くなる。地元の新聞に記事が載った時は、雨の中、客が店の外まで並んで、300個ほど売れた。最近、念願の冷凍庫を店に入れ、冷凍のミートパイとフルーツパイの販売を始めた。まだ宣伝はしていないが、良い反応だという。
 トリシアさんにおいしいパイを作るコツを聞いてみた。
 「コツは、考えすぎないことです。私の経験では、完璧主義者の人はおいしいパイを作れません。完璧に作ろうとすると、パイ生地を長く捏ね過ぎて、グルテンが多くなり固くなります。悩まずに素早く作れる人のパイ生地は、グルテンが出ず、サクサクになって最高です」
 アメリカでは、誕生日や祭典、パーティなどいつでもパイは食卓に上がるが、一番消費されるのは11〜12月にかけてのホリデーシーズンだ。感謝祭用にはアップルパイ、パンプキンクリームチーズパイ、チョコレートチェスパイの3種類の予約販売を行う。チョコレートチェスパイは、ピーカンとココア味のパイで、アメリカ南部で人気だが、カリフォルニアではあまり馴染みがないので客の反応が楽しみだ。

【ザ・ホールパイ 〜分けるかどうかはご自由に〜】
▽住所=2792 4th St. Santa Rosa, CA 95405
▽電話=(707)843-4365

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