ゴゲット・ブレッド〈カリフォルニア州〉
週に4日厳選したハード系を販売
フランス語で接客して、コミュニティに貢献

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左から、ナジン・シャリアットさん、ソラヤさん、ナス・サラマティさん

店舗前の行列
 

店舗内の様子

パン・ド・カンパーニュなど

 2017年1月、イラン出身のナス・サラマティさんとナジン・シャリアットさん夫妻は、カリフォルニア州サンタローザでフレンチベーカリー「ゴゲット・ブレッド」を開店した。

 ナスさんがパンを焼き始めたのは10年ほど前で、ピザを焼くために庭に小さな煉瓦オーブンを作ったのがきっかけだった。パン作りの本を読んで実験を始めたところ、おいしいパンが焼けて、魅力に取り憑かれ、その後は、パンだけを焼くようになった。電気技術者として仕事を続けながら、出張や家族旅行に行く度(主にフランス)に、20店以上のベーカリーでそれぞれ1週間から1カ月の修業をしてきた。
 「ベーキングと電気技術の仕事の似ているところは、鍛錬が必要なところ。技術の経験があるので、ベーキングを科学的に理解して、短期間で学ぶことができました。フランス在住の友達宅を訪れた時に食べたルヴァンが美味しかったので、ルヴァンの発酵について微生物学の視点で書かれた沢山の資料を読んで研究しました」とナスさん。
 スイス国境に近いフランス・オート=サヴォワ県にある小さな村では、長時間乳糖発酵させることで、グルテンを分解し、消化しやすい昔ながらのルヴァンを復活させる流れがあった。その村で、有機農業を支え、古代穀物の復興に力を入れ、粉を自分で挽くベーカーがメンターとなり、23年もののルヴァンを分けてくれた。
 ナスさんの焼くパンは、ほとんどこの地域のもので、オーガニック小麦粉、グレイソルト、水、ルヴァンだけを使い、発酵に16〜18時間かけるのが特徴。定番は、全粒粉とライ麦粉を少し配合した一番軽い「パン・ド・ヴィル」と、全粒粉の割合が高く重い「パン・ド・カンパーニュ」。
 バゲットとエピの他、日替わりで、チーズ入りフラットブレッドの「チーズ・フォガッセ」、パン・ド・ヴィルに胡麻がコーティングされた「パン・オ・セサミ」、ライ麦パン「パン・オ・セーグル」、ココアパウダーとオーガニックダークチョコ入り「ゴチョコ」、チーズブレッド「パン・オ・フォロマージュ」、オリーブブレッド「パン・オ・オリーブス」、1.5kgの大型カンパーニュ「ミシュ」、1m以上の長さの「パン・ド・パタージュ」などがあり、日によって3〜5種類のパンが販売されている。
 「パン・ド・ヴィル」が一番人気で、砂糖もバターも入っておらず、ほのかに甘い「ゴチョコ」は子供たちにとても人気がある。
 古代穀物を使ったパン作りにも力を入れている。去年の感謝祭には、グルテンが少ない古代穀物の一種、ホラーサン小麦を自ら挽いてパンを作った。今年は、古代小麦のヒトツブコムギ(アインコーン)を挽いて実験を始めたところで、後にタフにも挑戦する予定だ。
 オンラインによる事前注文が、売上の40〜50%を占める。
 「仕事帰りに買いにいらっしゃる方が、遅い時間でも希望の品が買えるので、喜んでいただいています。私たちも注文数に基づいて生産量を調整できます」
 パンの価格は高めだが、酸味の少ないサワー種ブレッドは、この地域では希少価値がある。家族との時間を大切にするため、週4日営業にしているが、限られた営業日に顧客が殺到し、うまく機能している。口コミで広まり、1年で売上は4倍になり、取材した土曜日は、開店時に20人以上の客が並んでいた。
 栄養士でもあるナジンさんと11歳の娘、ソラヤさんが歌うようにフランス語を交えて顧客対応していた。イランでフレンチスクールに通い、フランスとカナダのフランス語圏に住んだことのあるナスさんとナジンさんは、二人ともフランス語を愛し、二カ国語教育の大切さを信じており、2012年にはフランス語で教える公立小学校を創設したほど。このベーカリーも第二言語を推進するというコミュニティへの貢献なのだそうだ。接客時にフランス語を使うことで、様々なレベルのフランス語を話したい人達が集い、知っているフランス語を使う良い機会になっている。
 現在、ナスさんとナジンさんを含む5人(内ベーカーが3人)が働き、6人目を訓練中だとナスさんはいう。  「いつかは自分のベーカリーを始められたらと妻に話していましたが、夢物語だと思っていました。その後、フレンチスクールを創設して、今している仕事以外のこともできると気づき、新しいことに挑戦して良かったと思っています。一種の早期退職ですが、こんなにビジネスが成長するとも、こんなに長時間拘束されるとも思っていませんでした。人を育てて、一部の責任を担ってもらえるようになったら、少しコントロールできると期待しています。いつか日本からパン作りの修業をしたいという人の受け入れができればよいと思います」

【Goguette Bread】
▽住所=59 Montgomery Drive Santa Rosa, CA 95404
▽電話=なし(orders@goguettebread.com)

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予約されたパンの一部

笠石パンはドウを焼く直前に切る

パン・オ・オリーブス