Pain De Qui(パン・ド・キ)
〈京都市右京区〉
「ありがとう」は明日の励み、「美味しかった」が心底嬉しい
強固な地盤作りで顧客を確実に掴む

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店舗外観

山田友啓氏

店舗内の様子

 京都嵯峨野、大覚寺や広沢池に近い閑静な住宅地にある「Pain De Qui」は2015年7月1日にオープン。今年4年目を迎える。近隣のファンが定着、春の桜・秋の紅葉シーズンには嵯峨野を巡る観光客も来店し、地元になくてはならないベーカリーとして愛されている。

 オーナーの山田友啓氏は、敷島製パンM子会社のMレアルパスコベーカリーズが運営する「ポールボキューズ」京都大丸店に約11年間勤務した後、独立開業を目指して京都市内に4店舗を展開する「フリアンディーズ」に入社した。当時店長だった先輩社員が同店舗の前オーナーで、家族のことが理由でベーカリーを閉めるという話があり、店舗と機械設備一式を譲り受け同店をオープンさせた。
 店名の由来は「Pain De Mie」と「食事どき」を掛け合わせた造語。
 山田氏は、職歴や開業の経緯を次のように語った。
 「19歳でレアルパスコベーカリーズに入社して、ポールボキューズ京都大丸店勤務になりました。私は、専門学校等でパンを学んだ経験がありませんので、安定的に品質を保ち、一定量を生産しなければならないことを理解するまで時間が掛かりました。また、職業としてのパン製造は、抱いていたイメージと現実が大きく異なっていました。様々な葛藤や希望を持ちながら、前向きに日々の仕事に打ち込んでいるうち、パン作りの面白さと奥深さに気付き、独立願望を持つようになりました。フリアンディーズには、店舗全工程の掌握や接客、経営に関するノウハウを習得することが目標でしたが、先輩の店長から急に「開業」の話を持ち掛けていただき、約1年という短い勉強時間でしたが独立開業を決意しました。開業後、僅か7カ月という店舗でしたので、内装、設備、備品などほとんどが新品でした」
 店のコンセプトは、幅広い客層に愛され、高齢者でも気軽に立ち寄れること。高級品を目指している訳ではないが、どこにでもあるパンを並べているだけでは何の差別化もない。とは言っても、価格勝負の安売りベーカリーと競合する気は全くないという。
 「私の中で1斤300円の食パンは、高級品に属します。ホールセールの食パンではなく、手軽にリテイルベーカリーの美味しい食パンが食べたいという層を狙っています。現在、高級食パンがブームになっているようですが、毎日食べることができる値段ではないと思いますので、継続して食べていただけるパンを目指しています」と山田氏。
 続けて「高級食パンと命名して高価格の商品も考えていますが、今のところ実現していません。しかし、戦略的に価格を上げて販売の仕方を変える工夫は、今後益々必要になると思っています。作り手として、高級な原材料を使用して作っても仕上がったパンの味は、食べ比べると味の違いは明らかなのですが劇的に変化するものではありませんので、高級原材料の使用を謳い文句に価格を上げることはしていません。また、地域の固定客が増えれば増えるほど原材料を変更することや小さくすることもできませんが、原材料の高騰に歯止めが掛かりません」と日々の苦悩を口にした。
 パン作りのコンセプトは、ショートニングや乳化剤などの添加物は極力使用せず、安心・安全を基本にしていること。安全に対する認識は、ポールボキューズで充分に叩き込まれ、勉強を重ねたという。さらに、原料の入荷時から仕込み、発酵、焼成までオーナーが1人で作業しているため、絶対的に信用できるパンが製造でき、安心・安全に対しては、複数人で作業しているベーカリーに比べ勝っていると自負している。
 「それが個人店の強みで、味や食感と同じように安心・安全へのこだわりにも徹底することができます」  近隣には、大手チェーンベーカリーは出店していないが、数店舗の個人ベーカリーが点在している。商品構成でも他店との差別化ができており、客の選択肢によって好みのベーカリーを使い分けているようだ。
 同店のある嵯峨・広沢学区の総人口(2016年10月京都市調べ)は、男性8399人、女性9681人、計18080人。その内65歳以上の高齢者は、男性2463人、女性3444人、計5907人で全体の32.7%を占め、パン購入機会の多い女性の比率が約6割に達している。このことから、高齢化が進む地域であることが裏付けされ、コンセプトの一つ「高齢者でも気軽に立ち寄れること」は的を射ている。
 「私自身は、ハード系8割、菓子パン系2割のベーカリーが望ましいと思っていますが、地域性を考慮するとそれでは商売として成り立ちません。中には、ハード系しか置いていないベーカリーもあり、羨ましく思います。作っていて楽しいパンはハード系で、パン職人として実力が発揮しやすく、ごまかしが効かないことが理由です。しかし、現実は厳しく、硬くて食べられないと言われるほか、百貨店では気泡の大きいパンを小麦粉の使用量が少ないとクレームになったこともあります。『美味しいパンとは』という定義を多くの消費者に伝え、理解して買っていただくことがベーカリーの役目だと思います」
 売れ筋商品は、ダントツで「ゆだね食パン」。次はハード系。自店で炊いたカスタードクリームを使った「クリームパン」も人気がある。こだわりのパンはフランスパン2種。一つはバゲット・バタールのオーバーナイト製法。もう一つはストレート法。クロワッサンにホイップクリームとスライスいちごを挟んだ「いちごクリームサンド」は、注文を受けてから作る。
 同店では、食パン1斤を500gとしており、1斤表示を340gを基準にしている食パンと比べるとかなりの値打感がある。
 人材の確保について、開業以来ストレスを感じたことがないという。スタッフは常に店のことを考えて働いてくれ、絶大な信頼を寄せている既婚者の女性1人。繁忙時には、夫人と実母が支援している。ポールボキューズやフリアンディーズで経験した人の使い方から、気心の知れた少数精鋭での運営を基本にしている。オープンして約3年間、大きな問題なく順調に推移してきた。
 HACCPに対しては、未だ取り組みを始めていないが、具体的な勉強を行う予定をしている。  「百貨店時代に、好むと好まざるに関わらず、衛生観念を植え付けられましたので、専門知識を学び取った上で水平展開しようと思います」
 今後作りたいパンは「戦略を充分練った上で高級食パンにも挑戦したいと思います。また、自分自身で分野が違うと認識しているサンドイッチも本格的に取り組みたいと考えます。高級食パンで作るサンドイッチという繋がりではなく、カンパーニュなどのライ麦系のパンを想定しています」
 様々な技術を習得して、新しい分野に挑戦する意欲が旺盛な山田氏だが、店舗の安定経営を最優先に考えており、敢えて店売りのパン製造に集中しているという。近い将来、パン・ド・ロデヴにも挑戦するという意気込みをうかがわせた。
 山田氏は、将来の展望を次のように語った。
 「オープン当初は、京都の中心地に出店したいと考えていましたが、最近はここの立地が心地よく感じるようになってきました。パンを買いに来ていただく以外で、私に会いに来てくださる人も存在するようになり、そのことを楽しんでいる状況です。お客さまの『ありがとう』が明日への励みになり、『美味しかった』が心の底から嬉しく思えています。そして、来店したいただくお客さまを『こんにちは』と元気よく迎えられるコミュニケーションがベーカリーで良かったと思える瞬間です。周辺は、今後も宅地化が進み世帯数は増える傾向にあります。無理をして激戦区に出店するよりも、強固な地盤作りをして自然増のお客様を確実に掴む方が「Pain De Qui」にとって望ましい姿だとと考えています」

【Pain De Qui】
〒616-8307京都市右京区嵯峨広沢池下町76ハイツマルゴ1F
TEL075-882-8577
URL:http://pandoki.hp.gogo.jp
▽営業時間=7〜18時
▽定休日=月曜日(祝日は営業)
▽駐車場=2台
▽イートインスペース=7席
▽平均客数=40〜50人
▽平均客単価=約700円

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